木ノ下歌舞伎オープンラボ第一期 レポート

第一回 「古典のコトバ 現代のコトバ」

2017年2月7日(火)18:30~20:50
会場:京都芸術劇場 春秋座ホワイエ
ゲスト:土田英生(劇団MONO主宰・劇作家・演出家)
    糸井幸之介(FUKAIPRODUCE羽衣・劇作家・演出家・音楽家)
ナビゲーター:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)

日本人なら誰でも知っている日本最古のものがたり「竹取物語」をゲストに現代語訳していただくなど、古典と現代の「コトバ」の共通点や相違点などを実験的・実践的に探りました。

ナビゲーター木ノ下裕一さんによる基調講演でスタート。現時点で木ノ下さんの考える「古典を現代化した作品」に必要なことは①単体作品としての強度があること、②原作とのつながりがあること、の2つ。両方無いと面白い古典の現代化作品はつくれない。漫画「ドラゴンボール」(西遊記が原作)、向田邦子「隣の女」(井原西鶴の小説が原作)、英BBCドラマ「シャーロック」などの例をあげ、「古典の現代化」によって現代がどんな時代なのかが見えてくる、ということを分かりやすく解説。

後半は2名の劇作家をお迎えして「竹取物語」の現代語訳について研究しました。
古典の言葉の持つ意味の深さ、広さ、それを現代語で表現するときにどのようにして表現するのか。「今は昔」という始まりの言葉だけでも、フィクションであることの宣言であったり、この時間・時代に来てくださいという誘い、など単純に訳することのできない意味合いが含まれていて、それをどう訳すかは研究者や翻訳者によって異なってくる、など、それぞれの劇作家ならではの視点を披露。土田さんによる白熱のトークと糸井さんの独特の解釈に会場は笑いつつまれ、古典作品を掘り下げていく楽しさを十二分に感じることができました。
最後には土田さんが「竹取物語」を現代演劇化するなら、音楽家でもある糸井さんが主題歌を作るなら、というお題に答え、その発想の斬新さに参加者からは感嘆の声があがりました。

第二回 「古典のオンガク 現代のオンガク」

2017年 3月 8日(水)18:30~20:50
会場:京都芸術劇場 春秋座ホワイエ
ゲスト:豊澤龍爾(現鶴澤友之助 文楽三味線奏者)
テキスト朗読:伊藤彩里(パフォーマー)
ナビゲーター:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)

「オンガク」をテーマに、豊澤龍爾さんをゲストにお迎えして、文楽三味線を中心に古典の音楽について掘り下げながら、現代の音楽との違いや共通点、古典の現代化について探りました。

まずはゲストの豊澤さんより文楽三味線について解説。三味線の種類に始まり、打楽器でもあること、その特徴などを実演も交えて解説。三味線の音だけでさまざまな物や情景を表していく(「手」と呼ばれる)テクニックが披露され、義太夫節の名手による録音CDも聴きながら、義太夫、文楽三味線の魅力に迫りました。

後半は、誰もが知っている「ももたろう」の物語を題材に、パフォーマーの伊藤さんの朗読も交え、文楽三味線で表現してみるという実験。犬、猿、雉を三味線で表現するとどうなるか。文楽三味線の「手」によって、犬は狐に、雉はカラスにするなどの工夫も。人物の登場や川の流れなど、さまざまな場面に適した三味線の「手」があり、その発想の豊かさには驚きの声が。木ノ下さんによる鬼との立ち回り実演(?!)も飛び出し、会場には拍手が響き渡りました。

第三回 「古典のカラダ 現代のカラダ」

2017年4月16日(日)18:30-20:50
会場:京都芸術劇場 春秋座ホワイエ
ゲスト:井上安寿子(京舞井上流舞踊家)
ナビゲーター:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)

「カラダ」をテーマに、上方舞の中でも固有の特色を持ち、京都の年中行事となっている「都をどり」を支える“京舞井上流”の歴史を紐解き、日本舞踊における“振り”などを実演も交えて研究し古典と現代のカラダの共通点や相違点に迫りました。

この日は「都をどりin春秋座」会期中の開催ということもあり、「都をどり」を鑑賞してからのお客様も。
木ノ下さんから前回までのラボの説明の後、井上安寿子さんを呼び込み、さっそく京舞「山姥」の実演を鑑賞。それを踏まえて「山姥」の詞章を確認しながら唄と踊りで表現している内容について読み解いていきました。
そのあと木ノ下さんが質問し、それに井上さんが答える形で進行。京舞井上流の歴史について、能や文楽の要素が京舞に取り入れられた経緯を“人形ぶり”の実演も交えて解説、京舞井上流家元の名跡「井上八千代」、家紋である「井菱」の由来、「都をどり」の歴史も紹介されました。

木ノ下さんからは学生時代に初めて京舞を観たときの衝撃、その手法の斬新さから“京舞=コンテンポラリーダンス説”、本歌取りの多さから“京舞=ジュークボックス説”が飛び出し、京舞自体が古典と現代をつないでいるという考え方を提示。そしていよいよ核心に迫り、一つ一つの“振り”が何を表現しているのか、京舞「珠取海士」の後半を井上さんが実演つきで解説しました。
また、会場からお客様を募っての“京舞体験コーナー”も開催。会場から3名の方、そしてナビゲーターの木ノ下さんも一緒に、女性らしい形を現わすための基本である「おいどをおろす」姿勢にチャレンジ。上体はゆったり背筋を伸ばしたまま、おいど(お尻)を低く保つ体勢の難しさを体感して頂きました。

質疑応答では「曲と衣装の関係」「京舞では特に顔の表情をつくらないが、なぜか」など熱心な質問が出て、京舞への高い関心が伺われました。
最後に「柱立」を実演。ここまでのレクチャーを受けたことで、現代に息づく京舞の豊かな魅力に気づくことができる時間となりました。