1. HOME
  2. オープンラボ
  3. 少しだけ深く読み解く「詩劇としての能」01-『井筒』のすべて-
2020年2月11日(火・祝)「春秋座—能と狂言」 より能『井筒』観世銕之丞 撮影:井上 嘉和
2020年2月11日(火・祝)「春秋座—能と狂言」 より能『井筒』観世銕之丞 撮影:井上 嘉和

京都芸術大学 藝術学舎 春季 オンライン講座(受講生登録制)
京都芸術⼤学舞台芸術研究センター提供連続講座
少しだけ深く読み解く「詩劇としての能」01-『井筒』のすべて-

七〇〇年の歴史と変化を通して学ぶ、
「現代に⽣きる能」の魅⼒

現在、内外の芸術界から熱い視線が注がれている能楽(能と狂⾔)ですが、その⻑い歴史のゆえに、能楽についてのわたしたちの理解はいささか表⾯的で、画⼀的なものになっています。それは今にはじまったことではなく、四〇〇年は昔にさかのぼる現象ですが、この講座では、本学の春秋座で上演されてきた能のなかから1曲をとりあげ、その映像を⽤いて、能の作者、上演史、素材、テーマ、趣向、演出、変化、逸話などについてじっくりと学び、「能」という舞台芸術の特⾊と魅⼒を伝えたいと思っています。今回は『井筒』をとりあげます。これから能を知りたいと思っている⽅、能についてもう少し深く知りたいと思っている⽅の受講を歓迎します。なお、毎回、最後の30分を質問にあて、5回のうち1回は演者をお呼びします。

担当講師
天野文雄(京都芸術大学舞台芸術研究センター特別教授)

1946年、東京都に生まれる。早稲田大学第一法学部卒業後、国学院大学大学院文学研究科修了。文学博士。大阪大学名誉教授。専門は能楽研究。著書に、『翁猿楽研究』(平成7年、和泉書院)、『能に憑かれた権力者』(平成9年、講談社選書メチエ)、『現代能楽講義』(平成16年、大阪大学出版会)、『世阿弥がいた場所』(ぺりかん社、平成19年)、『能楽名作選(上下)』(角川書店、平成29年)、『能楽手帖』(角川ソフィア文庫、平成30年)、共著に、『岩波講座能・狂言Ⅰ〔能楽の歴史〕』(昭和62年)、共編著に『能を読む』(全4冊、角川学芸出版、平成25年)など。研究の延長として、大槻文藏、梅若実玄祥、福王茂十郎の諸氏や国立能楽堂企画制作課と協同して、平成初年以来、廃絶曲の復元上演、現行曲の見直しにも数多く参画している。観世寿夫記念法政大学能楽賞、日本演劇学会河竹賞受賞。

 

 
 
2022年5月11日(水) 19:00~21:00
第一回 『井筒』を理解するための基礎 
この回では、まず令和2年2⽉に春秋座で上演された『井筒』の映像をかんたんに紹介して、その概要を理解したうえで、『井筒』の成⽴時期、作者世阿弥の評価、その後の上演史、現代における『井筒』評価などについて説明し、さらに参考までに、『井筒』にかぎらず、能を鑑賞/読解するさいに講師が留意していることを紹介します。それを受けて、この回では、『井筒』の典拠は『伊勢物語』そのものではなく、『伊勢物語』の中世における注釈であること、さらに『井筒』の舞台が⼤和の在原寺なのはなぜか、その在原寺は当時すでに廃寺となっていたというのが近年の説ですが、そう考えてよいか、といったことについて考えます。
 
 
2022年5月25日(水) 19:00~21:00
第2回 『井筒』の詞章をめぐって
この回では、音楽(謡、囃子)、舞(舞、舞踊的な所作)とともに能の重要な構成要素である言葉(謡曲、戯曲)を話題にしますが、具体的には、掛詞、縁語、序詞、和歌、漢詩を多用した文体についての説明になります。そうした修辞が「詩劇としての能」の源泉になっていることにも触れたいと思います。また、同じ『井筒』でも流儀によって詞章が異なる場合があることを紹介して、どれが本来の文句で、どれが後代に改められた文句なのかを考え、さらにその違いが『井筒』のテ-マ理解にどう影響するかを考えます。ここでは資料として『井筒』全体の詞章を現代語訳付きで配布します。
 
 
2022年6月8日(水) 19:00~21:00
第3回 『井筒』の演出をめぐって
この回では、後ジテの紀有常女の霊が業平の形見の装束をまとって(つまり男装で)登場することについて考えます。この演出については、業平の霊が憑依したとする見方が比較的多いのですが、はたしてそう考えてよいのかどうかも考えてみたいと思います。その場合、序ノ舞の前の「昔男の移り舞」という文句をどう考えるかも関係してきます。また、序ノ舞のあと、紀有常女の霊が井筒の底を覗いて、その水に映ったわが姿を見る印象的な場面の演出についても考えてみます。ここでは主に序ノ舞とその前後の映像を見てもらいます。
 
 
2022年6月22日(水) 19:00~21:00
第4回 『井筒』一曲を通して読む
この回では、これまでの講義で得た理解のうえに立って、2回目に用意したテキストによって、『井筒』一曲を趣向や修辞や演出にも留意しながら読み、最終的に『井筒』が描こうとしていることを考えてみます。これには対訳で掲載されている現代語訳も役立つはずです。素読するだけなら20分もかからないテキストですが、そこに紀有常女という存在を超えた、懐旧、恋慕という普遍的な感情がいかに深く描かれているかを確かめたいと思います。それが確かめられたなら、この講義の目的はほぼ達せられたことになります。演者にはこの回か次回にきていただく予定です。

ゲスト決定!
片山九郎右衛門氏(観世流能楽師)
_

観世流能楽師。昭和39年 九世 片山九郎右衛門(人間国宝)の長男として生まれる。
祖母は京舞井上流四世家元 井上八千代、姉は五世家元 井上八千代。幼少より父に師事し、長じて故八世 観世銕之亟に教えを受ける。父とともに片山定期能楽会を主宰。
全国各地で多数の公演に出演するほか、ヨーロッパ、アメリカなど海外公演にも積極的に参加している。各地での薪能、ホール能など能楽堂以外での公演も制作、プロデュースしており、令和4年4月には新作能「媽祖ーMASOー」の企画・指揮を手掛けた。
京都府文化賞奨励賞、京都市芸術新人賞、日本伝統文化振興財団賞、文化庁芸術祭新人賞、京都府文化功労賞、第三九回観世寿夫記念法政大学能楽賞受賞。重要無形文化財総合指定保持者。
 
 
2022年7月6日(水) 19:00~21:00
第5回 『井筒』一曲を鑑賞する
この回では、春秋座の『井筒』の映像(シテ、観世銕之丞氏)を通しで鑑賞します。通しといっても、そのまま流すと2時間ほどかかるので、アイの語りの部分などはカットせざるをえませんが、前回のテキスト読解ではわからなかった『井筒』の象徴性や情調についても感じとるところがあるだろうと思います。残った質問の時間は、この回だけでなく、5回の講義全体についての質問でもけっこうです。