橘市郎
猿翁さんは自分の演出がどの様な効果を表すか、ちゃんと解っていた様である。その作品の出来がどんなものか確信しているからこそ明解な指示が出来たのだろう。それは、適確で鋭いものであった。指摘の後は見違えるように作品が明解になった。私は演出とはこういう作業を言うのだと知った。猿翁さんは役者の演技を助けると共に作品をレベルの高いものに仕上げていったのである。良い演出家に指導された役者は最大級の力を発揮するものだ。私はただ感心してその演出ぶりを眺めていた。
誰にも解りやすく感動させる演出こそ秀れているのが理解できたのもその時である。
演出助手を務めるお弟子さん達が見事に動き回るのも私には驚きであった。こうしてひとつの素晴らしい作品が出来上がると思うと、総合芸術という意味が理解出来るような気がした。
私は一枚の絵をこれほどまでに美しく仕上げられる猿翁さんを益々尊敬するようになった。
観客が解りやすく、興味を持って観ることの出来る芝居を作り出すことこそ演出なのだと教えてくれた猿翁さんを心から尊敬する私の気持ちが解っていただけると思う。猿翁さんありがとうございました。
あなたは私の永遠の師です!
(音楽・演劇プロデューサー)