松尾スズキ×つかこうへい
朗読劇「蒲田行進曲」
松尾スズキの演出により、つかこうへい不朽の名作が甦る!!
10/19(土)~20(日)に京都芸術劇場 春秋座(京都芸術大学内)にて朗読劇「蒲田行進曲」を上演いたします。演出は、大人計画主宰、シアターコクーン芸術監督をつとめ、2023年に京都芸術大学舞台芸術研究センターの教授に着任した松尾スズキ。
「蒲田行進曲」は、つかこうへいの不朽の名作。映画の撮影所を舞台に、スターと大部屋俳優の奇妙な友情、そしてその間で揺れ動く女優の姿が描かれる人間味溢れる活劇。1980年に第15回紀伊國屋演劇賞を受賞。後に小説化、映画化され、小説は第86回直木賞受賞、映画は第6回日本アカデミー賞をはじめ映画界の各賞を多数受賞しました。
つかこうへい作品を松尾スズキがどう演出するのかご期待くださいませ。
_
松尾スズキ(演出)
松尾スズキ コメント
九州の美大生だったわたしは、学生演劇で上演された『熱海殺人事件』を見て、
演劇の自由さに衝撃を受け、芝居を始めた。
それ以来、お会いする機会もなかったけど、いつもどこかにつかさんがいた。
そして今年わたしは62歳になる。つかさんがお亡くなりになった歳になって、いまだ芝居を続けるのである。
なにか心の中で決着をつけたい。すでにスタイルが出来上がっている自分にとって、朗読劇という形のほうが、つかさんの本質に近づける気がして、それでこの公演を提案させていただいた。
改めてホンを読んだが、つか芝居は「音」だと思う。
新しいことをやるつもりはいっさいない。心に思い描いてきたつか芝居の再現に注力したい。
出演者からのコメントはコチラ
蒲田行進曲についてどう思われているのか、また本公演に出演する意気込みについて、
出演者の皆様にコメントをいただきました。
上川周作
2015年に現・京都芸術大学を卒業しました。大学の授業で映画や演劇は多くの人が関わり、創られていることを知り、作品に関わる方々へのリスペクトと感謝する事の大切さを学びました。
松尾スズキさんは僕が大学時代からの憧れの存在です。一乗寺の本屋さんで松尾さんの本を見つけては購入し、東京で公演がある時は夜行バスに乗って観劇に行っていました。松尾さんのお芝居は思わず笑ってしまうけれど、本当に笑ってよかったのだろうかと考えさせられます。それでも目の前でおきていることに笑わずにはいられなくて、観劇後になぜ笑ってしまったのか、説明できない不思議を感じたりもします。
今回は『蒲田行進曲』。どの様に朗読劇として演出されるのか、とても楽しみです!
朗読劇はセリフを読む声からたくさんの事が想像出来ると思います。とくに掛け合いのテンポを意識して、どんどん上がって行くテンションとキャラクターの深まってゆく関係性を丁寧に表現できたらいいなと思っています。皆様に楽しんでいただける様に精一杯頑張ります。是非劇場へいらしてください。よろしくお願いいたします。
笠松はる
・蒲田行進曲についてどう思われていますか?
朧げに映画を見た子供時代。
幼い私は、銀ちゃんの横暴さに驚き、従うヤスの意味がわからず、小夏さんは振り回されて気の毒で、みんな何でこの人のことが好きなんだ?と思っていた。幼かった。
大人になり、小説を読み、再び映画を観た。 銀ちゃんの、自惚れと恐れを絶妙に内包した孤独な姿にあっという間に魅了された。 2024年の今、こんなめちゃくちゃなスターがいたらすぐ炎上だ。だけどその面倒なスターっぷりは魅惑的で眩しく、時折見せる弱さや優しさが憎い。読みながら、銀ちゃんと小夏のそばで徐々に変化していくヤスと、次第にヤスを見つめてゆく小夏を、なぜか自分のことのように苦しく感じ続けたことを覚えている。 作品の中の銀ちゃんに触れる時、自分の中にはヤスと小夏がいる気がして切なくなる。なぜかを最近はよく考える。破天荒な銀ちゃんの魅力に掴まれながら。
・本公演に出演する意気込みを教えてください。
つかこうへい作品に、それも『蒲田行進曲』に自分が携われるとは。それが松尾スズキさんの演出だとは。さらには作品の舞台である京都での公演。楽しみと緊張に、身の引き締まる思いです。 つか芝居のエネルギッシュなテンポ感、躍動感、ヒリヒリする矛盾した心情や言葉の応酬はとても魅力的で、それを松尾さん率いるこの座組の中で自分が体感して発露していけることを思うと、今から胸がどきどきしています。
朗読という、お客様の脳内に語りかける演劇スタイルを松尾さんがどのように創られるのかも楽しみです。
銀ちゃんとヤス、破天荒で特別な関係である二人の男性の間で、「妊娠」という、進めばもう引き戻せない世界を歩んでゆく小夏の思いに、寄り添って、この秋、大事に生きたいと思います。
少路勇介
まさか自分の俳優人生のなかで、あのつかこうへい作「蒲田行進曲」に関われるとは思ってもみませんでした。しかも松尾さん演出の朗読劇!えー想像がつかない。
多分観に来てくださるお客さんも、そう思われているんじゃないでしょうか?
僕も絶対に普通じゃない最高の朗読劇「蒲田行進曲」になると思っております。
ハードルをかなり高くしていますが、階段もハードルも高い方が転げ落ちた時、面白いかと思います。
朗読劇は、お客さんの想像によって成り立つものだと思いますし、演者と観客が一体になり、その空間にいる全ての人によって出来上がる舞台だと思います。
しかし、朗読劇が初めてですのでどうやればいいか正直分かりません。とにかく圧倒的な熱量を持って、26年位前に初めて本多劇場で観た松尾さんの舞台で体感した劇場があつくうねる様な感じを出せたらと思います!
東野良平
「映画じゃなくて舞台が先なんだ」と最近知り、今回戯曲を初めて読みました…舞台版のヤス、柄本さんなんだ!
40年以上前の戯曲に、鷲掴みにされました。
破天荒でエネルギーに満ちた台詞の応酬のなかで、銀ちゃん・ヤス・小夏が大袈裟に、切実に、愛を曝け出す様子は、荒唐無稽であり人間そのものであり…笑ったらいいのか、泣いたらいいのかわかんない、思わず耳が火照るほどの昂りを感じて、まだ一言も台詞を口に出してないのに!と驚きました。(そして、しっかり2幕最後のヤスの台詞に泣きました。)
つかこうへい作品はとにかく台詞が面白い。この濃密な台詞の数々を、朗読劇という、より戯曲と真正面からぶつかるスタイルで芝居にするとき、どうやったらいいんだろう、難しい、でもこの台詞を言ってみたい!以前、松尾さんが優れた戯曲の条件として仰っていた「俳優が言いたくなる台詞が多い戯曲」ってこれのことだ!と一人興奮している夜です。
僕が演劇を始めた頃には既につかさんは亡くなられていて、漠然と「伝説の演劇人」という存在でした。それが今回、現在進行形の伝説である松尾さんのもとで、傑作「蒲田行進曲」を演じることができるなんて!演劇の最高峰が交わる瞬間に携われる、こんなに光栄なことはないです。
僕にとっては2022年「ドライブイン カリフォルニア」以来の松尾さん演出。しかも初めての朗読劇。きっとまだ知らない身体の使い方があり、声の扱い方があります。また、今回の座組では、松尾さん・大人計画の作品で拝見してきた先輩方、松尾さんの講義で1年間鍛えられた若さ溢れる学生の皆さんのちょうど中間のポジションにいます。全方位から吸収し、練り上げ、本番の2ステージで出し尽くしたいです。
春秋座の舞台からはどんな景色が広がっているでしょうか。「蒲田行進曲」の濃密なエネルギーで劇場空間を満たすことができるよう、全身全霊で芝居します。
末松萌香
京都芸術大学 舞台芸術学科の末松萌香です。
今年の2月に松尾さん演出の『命、ギガ長スzzz』に出演させていただき、松尾さんのもとで演劇の楽しさや俳優として何が必要なのかを学びました。そして今回、再び松尾さんのもとでお芝居をさせていただくことになりました。とても嬉しい。しかも、つかこうへいさんの『蒲田行進曲』を、朗読劇で。まだ触れたことがなかったつかこうへい作品を、松尾スズキ演出で、なんて贅沢なんでしょう。将来俳優を志している身として、これほど貴重な経験はありません。朗読劇もプロフェッショナルな方々と一緒にお芝居をするのも初めてで不安と緊張でいっぱいですが、それを上回るワクワク感があります。どんな演出になるのか、どんな朗読劇になるのか、今から稽古が待ち遠しい。
「観に来て良かった」と思っていただける様に、作品と誠実に向き合い精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いします。
松浦輝海
京都芸術大学舞台芸術学科の松浦輝海です。去年に引き続き、また松尾スズキさんの舞台に少し関わらせて頂ける事になりました、あの時の緊張を思い出して、もう今からちゃんと震えています。「プロの役者の方々と同じ舞台に立つ」さらに「つかこうへいさんの蒲田行進曲に朗読劇で挑む」という事で、ギリギリ緊張M A X、今はそんな一歩手前です。
去年、参加させていただいた松尾スズキプロジェクト発表公演『命、ギガ長スzzz』のコメントで松尾さんは「純然たる素人と芝居を作ろうと言うのです」と書かれていました。『命、ギガ長スzzz』を終えても勿論自分はまだ「純然たる素人」のまま。しかしなんだか今回は気持ちだけはそうもいかない、だって松尾さんの舞台にプロの方々と一緒に出る訳ですから。公演までに自分は、もしくは公演をへて自分は「純然たる素人」から一歩前に出なければならない、そんな感じがするのです。ギリギリ心地いい緊張に体がフルフルと震えてきました。自分にとってもこれは大きな 「けじめ」の公演になるような気がして震えているんだと思います。
山川豹真(ギター)
京都芸術大学情報デザイン学科の山川豹真です。昨年、18歳で初めて演劇に挑戦しました。松尾さん の舞台です。右も左も分からない中、とにかく松尾さんの授業や演出を信じて進もう!必死にもがいた一年は、振り返って、表現の世界を志す私に足りない姿勢を知る、得難い経験となりました。
最近、AIで遊んでいる。絵コンテを描き、それに沿う画を生成し、動画化させて一つの映像作品にしたり、その精度に慄いたり。けれど、AIにもできない表現はある。たとえば、ギターの 演奏風景。AIは、弾かれた弦が空間や身体に反響し、それがまた指使いや表情に作用するという過程を知らずして「演奏」するから、ぎこちない。そういった意味で一方舞台は、役者が互いの熱をぶつけ合い物語を動かす、人が人として生きる、その根源的な理由を示せる場である。
私は「ギター(演奏)」として参加する。人間もまだまだ負けちゃない。それをただ、音として伝えたい。よろしくおねがいします。
作|
つかこうへい
演出|
松尾スズキ
出演|
上川周作 笠松はる 少路勇介 東野良平 末松萌香 松浦輝海 山川豹真
スタッフ|
演出助手:土橋淳志
舞台監督・照明・音響:株式会社ピーエーシーウエスト
宣伝美術:矢野晋作
制作統括:安藤善隆
制作:森田有紀・吉田和睦