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「木ノ下裕一の伝統文化論」レポート

劇場スタッフが毎回の講義の様子をレポートでお届けします。 
https://k-pac.org/events/14324/

 

2025年4月15日(火) 

【第一回】 『道成寺の世界』(前編) ~鬼と龍の物語~
  
いよいよスタートした公開講座「木ノ下裕一の伝統芸能論」。約80名もの受講生が集まり、木ノ下さんのわかりやすい語り口調&深い内容の講義に受講生のみなさんはあっという間に引き込まれているようでした。
まずは木ノ下さんが古典作品を現代で上演する際、どういった姿勢と視点で作品と向き合っているかを手書きの図で説明。続いて、本日のテーマである『道成寺』の世界へ。「安珍と清姫伝説」が説話を経て、能や歌舞伎といった芸能に発展する過程で何が削ぎ落とされ、何が加わったのか。真のテーマは何かについて注目しました。
次回は、この幹からどんな枝や葉が出てきたのか。現代の作品についても解説する予定です。

木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

いつも素敵なブローチを付けておられる木ノ下さん。第一回となる本日のブローチはズバリ「龍」(龍の絵文字)。『道成寺』を語るに欠かせない蛇体が変化して龍になる・・・。

 

 

2025年4月22日(火)

【第二回】『道成寺の世界』(後編) ~‶おんな″を描く~

前回、『道成寺』は「女の抑圧」が真のテーマと述べた木ノ下先生。
今回は『道成寺』をモチーフに作品を書いた昭和を代表する女性作家たち、向田邦子と有吉佐和子の著作を用いてそれぞれの視点を深く考察しました。第三回(4/29)からは二週に渡り『隅田川』を取り上げます。

木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

本日は道成寺の「入相桜(いりあいざくら)」にちなんで桜を。

 

 

2025年4月29日(火・祝)

【第三回】『隅田川』(前編) ~弔いの物語~

第三回からは世阿弥の息子、元雅が書いた能『隅田川』を取り上げます。
愛息を亡くして「物狂い」(執心のあまり錯乱状態に陥る)となった母親。能が進行するにつれて観客の視点が変化していく点に注目し、上演映像を見ながら解説していきました。
江戸時代になるとこの筋立ては「隅田川物」として歌舞伎や浄瑠璃で人気を博します。
続いて、三代目猿之助(二代目猿翁)の歌舞伎『雙生隅田川』(1994年)の映像を上映し、登場人物とテーマの変化=観客の興味関心が変わっていく様をたどりました。

木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

古典の世界で『隅田川』といえば都鳥(みやこどり)。現在ではユリカモメとされています。

 

 

2025年5月13日(火) 

【第四回『隅田川』(後編)
~近松からクドカンまで、変奏の系譜~

 木ノ下裕一が「古典」を掘り下げて「現代」を思考するこの講座もちょうど折り返し地点。
『隅田川』論後半の今回は、人気脚本家の宮藤官九郎が手掛けた2021年1月放送のドラマ『俺の家の話』を取り上げました。
本作は現代の「隅田川物」で、プロレスと能という一見無関係に見える要素の共通点に着目しながら、古典作品を通じて現代社会を俯瞰する手法の醍醐味と効果を解説しました。次回からは、いよいよ近松門左衛門の世界へ!

木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

ドラマ『俺の家の話』にちなんで

 

 

2025年5月20日(火) 

【第五回『心中天網島』(前編) 
~近松「心中物」の集大成~

その生涯に11作の「心中物」を遺した浄瑠璃・歌舞伎作者、近松門左衛門の円熟期に書かれた最高傑作『心中天網島』を取り上げ、治兵衛の妻・おさんの生き方に着目。
この作品でも、前回の『俺の話の家』同様、「家」を巡る人々の生き様が描かれています。
『心中天網島』とは、中国のことわざ「天網恢恢(天は悪人を捕まえるために張り巡らした網で取り逃がさない)」と地名の「網島」をかけており、大坂(おおざか)のまちに張り巡らされた水路と格子状の道や橋を「網」に見立てており、「水」が重要なキーワードになっています。次回は、心中物を扱った男性作家2名を取り上げます。

木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

大坂/大阪(おおさか)は今も昔も「水」の都

 

 

2025年5月27日(火)

【第六回】『心中天網島』の世界(後編) 
~遺された者たちの声~

第六回は、前回詳しく見た近松門左衛門の『心中天網島』を引いて物語を書いた男性作家たちに着目。
『天網島』の治兵衛の妻おさんの名前をタイトルに取った太宰治『おさん』は、「家」に縛られ心中してしまう男の苦しさを、織田作之助の『夫婦善哉』は浄瑠璃を散りばめつつスピード感ある語り口で、「家」を持てない男が苦しさを抱えながら内縁の妻との明日を綴っていると読み解きました。全七回のこの講座もいよいよ大詰め。
次回の第七回は総括として『勧進帳』を軸に、木ノ下歌舞伎が古典「能」をどのよう現代の作品として提示したか、その秘密に迫ります。
最終回だけでも必聴!

木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

夫婦(めをと)⇒ペア⇒仲良しワンコズ

 

 

2025年63()

【第七回総括勧進帳』の世界 
能から木ノ下歌舞伎まで



「古典を掘り下げ、現代を思考」してきたこの講座も最終回。
木ノ下先生が主宰する木ノ下歌舞伎での実践について、2016 年に春秋座で上演された木ノ下歌舞伎『勧進帳』の映像を見ながらお話いただきました。 能『安宅』をもとにして書かれた歌舞伎十八番の一つ『勧進帳』(天保11 年初演)をリクリエーションするに当たり、木ノ下先生は完成された作品の中に圧縮されているもの(背景・人間模様など)を現代において解凍し解釈するための作業を丁寧に行ったといいます。例えば「関所」は何を止めているのか、古典作品に描かれることと現代のそれとは何が違い何が通じるのか。現代を生きる自分が過去を手元に引き寄せ、未来を見つめる視線を持つ鍛錬が肝要だ、と木ノ下先生はこの講座を締めくくりました。 約80 名の受講生と終始和やかに時間と思考を共有した約2 か月間。爽やかな充実感が教室に満ちていました。 また来年度の講座でお会いしましょう!



木ノ下先生の胸元を飾るブローチにも注目!
〈今日のブローチ〉

安宅関でみんな足止め(ストップアイコン)
木ノ下歌舞伎のロゴマークの逆立ちにも見える・・・