―京都芸術大学 舞台芸術研究センター シンポジウム― 舞台芸術と〈怪異〉
京都芸術大学 舞台芸術研究センターでは、舞台芸術をめぐる研究と実践の往還を通して、舞台芸術の可能性を探究しています。今回のテーマは〈怪異〉。
企画趣旨
能や狂言、人形浄瑠璃、歌舞伎、落語、講談などの古典芸能から現代の演劇にいたるまで、日本の舞台芸術においては妖怪や幽霊、霊的な存在、人知を超えた不可思議な現象など、様々な〈怪異〉が登場します。〈怪異〉とはそれぞれの時代における社会状況や文化背景によって生み出されるものですが、近年ではゲームやマンガ、小説、映画、ネット動画などの各種メディアにおいて、いわゆるホラーコンテンツが活況を呈しています。本シンポジウムでは、文学や歴史学、表象文化論などの研究者や実務担当者、実演家をお招きし、様々な領域における〈怪異〉の様相を歴史性と同時代性からひも解きます。舞台芸術と〈怪異〉の関わりや可能性を考えるきっかけとしたいと思います。
文・赤井紀美
実演 一龍齋貞橘「四谷怪談より お岩誕生」
歌舞伎「東海道四谷怪談」などでよく知られるお岩の怪談ですが、講談では歌舞伎とは異なる展開や内容が語られます。今回のシンポジウムでは貞橘先生に「お岩誕生」を口演いただきます。師の一龍齋貞水先生から受け継いだ演目で、お岩が誕生するまでの怪奇に満ちた経緯が描かれます。 疱瘡のため顔に痘痕のある田宮家の娘・お綱は、奉公人の伝助と結ばれます。伝助は芸州安芸守の足軽小屋で飯炊きをしており、足軽小頭の大八郎が殺害した金貸しの死体の処分を命じられます。困った伝助は死体を自宅の押し入れに隠します。出産を間近に控えたお綱がひとりで自宅にいると、夫同様殺害された金貸しの女房の幽霊が現われ、夫に会わせてくれと頼んできます。押し入れの死体を見つけたお綱は驚いた拍子に女の子を出産して絶命。お岩と名付けられたその子は後に伊右衛門を夫に迎えますが、実はこの伊右衛門、大八郎の実子だったのです…。
(参考:一龍齋貞水口演「お岩誕生」山本進編『怪談ばなし傑作選』立風書房 1995年8月)
登壇者紹介(登壇順)
赤井 紀美(あかい・きみ)
東北大学大学院文学研究科准教授、京都芸術大学舞台芸術研究センター客員研究員。近世後期から近現代における演劇と文学を専門とする。編著に『没後130年 河竹黙阿弥―江戸から東京へ』(2023年)、共編著に『築地小劇場100年―新劇の20世紀』(2024年、ともに早稲田大学坪内博士記念演劇博物館)など。
一柳 廣孝(いちやなぎ・ひろたか)
横浜国立大学名誉教授、東京女子大学特任教授。怪異怪談研究会前代表。日本近現代文学・文化史を専門とし、心霊学や怪談、怪異文化を研究。著書に『〈こっくりさん〉と〈千里眼〉―日本近代と心霊学 増補版』(青弓社、2020年)など。
野村 朋弘(のむら・ともひろ)
京都芸術大学芸術学科教授、舞台芸術研究センター主任研究員。松尾大社文化研究所研究員。日本中世史を専門とし東京大学史料編纂所で歴史学データベースの構築・運用にも携わる。著書に『伝統文化』(淡交社、2018年)、『諡―天皇の呼び名』(中央公論新社、2019年)など。
南出達行(みなみで・たつゆき)
日本芸術文化振興会(国立劇場)職員。京都大学文学部卒業。ぴあ株式会社勤務を経て、イギリス留学。ロンドン大学ゴールドスミス校修士課程修了(アート・マネジメント及び文化政策)。日本芸術文化振興会では調査資料課において所蔵資料を活用した展示企画に携わったのち、現在は企画課において法人の広報や普及教育事業を担当している。
茂木 謙之介(もてぎ・けんのすけ)
東北大学大学院文学研究科准教授。日本近代文化史・表象文化論を専門とし、怪異やスピリチュアリティを研究。編著に『〈怪異〉とナショナリズム』(青弓社、2021年)、著書に『SNS天皇論―ポップカルチャー=スピリチュアリティと現代日本』(講談社、2022年)など。
一龍齋 貞橘(いちりゅうさい・ていきつ)
講談師。日本大学芸術学部在学中に一龍齋貞水へ入門し、2013年真打昇進。人間国宝・一龍齋貞水最後の弟子として多くの演目を継承し、古典講談や怪談を得意とする。研究者との共同研究や学術協力にも積極的に取り組んでいる。
主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センター
