復曲能「菅丞相(かんしょうじょう)」上演
菅原道真の苦悩と天下泰平祈念をえがく
「復曲」とは、たとえば世阿弥の時代には制作・上演されていましたが、その後、上演がとだえてしまった能の復活上演のことです。
歴史的には、江戸時代の将軍綱吉、家宣時代に大量の希曲が上演された例があり、近代においては、昭和30年代の金剛流による『泰山府君』『碁』の復曲が試みとしては早い例で、昭和57年の法政大学能楽研究所によって、現行形態とは大きく異なる形の『雲林院』が上演されて以来、断続的に行われてきました。
これにもっとも意欲的に挑戦したのが、観世流の梅若玄祥氏と大槻文蔵氏で、大槻氏の復曲活動は、世阿弥自筆の台本が残る昭和59年の『松浦佐用姫』を皮切りに、今日まで現行曲の一部の復活演出も含めると20回ほどになります。
復曲の意義は、なんといっても、「古典劇」となって久しい現代の能を相対化すること-現在の能を絶えざる変化の集積体として、絶対的なものとみる見方に反省を促すこと-にありますが、一日だけという能の特殊な上演形態もあって、せっかくの復曲に接することができる人はきわめてかぎられています。同じ関西でも、大槻氏による大阪での復曲は、京都ではあまり知られていません。
このたびの企画は、この30年ほどのあいだに、復曲に主導的な役割をはたしてきた大槻文蔵氏がてがけたもののうち、平成14年の菅公1100年祭にさいして上演された『菅丞相』を京都で再演し、現代の能における復曲の意義を考える機会としたいと思います。
プログラム
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14:00~14:10
解説 天野文雄(能楽研究/京都造形芸術大学舞台芸術研究センター所長・教授)
14:10~15:30
復曲能『菅丞相』上演 大槻文藏、福王茂十郎 他
<休憩>
15:45~16:30
トークセッション「映像と語る復曲『菅丞相』」
大槻文藏(シテ方観世流能楽師)
渡邊守章(演出家・フランス演劇/京都造形芸術大学客員教授)
天野文雄(進行)
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出演
前シテ 菅丞相の霊(童子) 大槻文藏
後シテ 菅丞相の怨霊 大槻文藏
ツレ 火雷神 大槻裕一
ワキ 法性坊 福王茂十郎
ワキツレ 従僧 福王和幸
ワキツレ 従僧 喜多雅人
間 能力 茂山茂
笛 杉市和
小鼓 吉阪一郎
大鼓 河村大
太鼓 前川光長
後見 赤松禎友
〃 武富康之
地謡 上野朝義
〃 上野雄三
〃 山本博通
〃 浦田保親
〃 寺澤幸祐
〃 林宗一郎
〃 齊藤信輔
〃 浦田親良
平成14年4月上演 会場:大阪天満宮本殿前特設舞台
節付・型付・演出・装束選定・出演(シテ方):大槻文藏 監修:天野文雄
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主催:京都造形芸術大学舞台芸術研究センター
協力:公益財団法人大槻能楽堂
助成:平成27年度 文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業
関連公開レクチャー
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上演に併せて、関連公開レクチャーを開催します。「菅丞相」を題材にした歌舞伎の演目、能の「復曲」の歴史、「復曲」が現代の能に及ぼす影響等など、レクチャーを通じて、通常の能とは根本的に異なる復曲の上演について学びます。1レクチャーのみの受講も可能です。
●参加費無料/要事前申込み
(1) 7月2日(木)18:30 ~20:30
「東京における「復曲」を展望する」
講師:松岡心平(能楽研究/東京大学教授)
コーディネーター:天野文雄
会場:京都造形芸術大学 人間館NA413教室
(2) 7月9日(木)18:00~20:30
第一部:「歌舞伎のなかの菅丞相」
講師・田口章子(歌舞伎研究/京都造形芸術大学教授)
第二部:「国立能楽堂における「復曲」の軌跡」
講師・諸貫洋次、大貫誠之(国立能楽堂企画制作課)
コーディネーター:天野文雄
会場:京都造形芸術大学人間館NA412教室