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KPACレクチャー・ワークショップシリーズ
春秋座―能と狂言 関連企画
レクチャー「”早世の天才”観世十郎元雅の生涯と作風」

世阿弥には、十郎元雅(もとまさ)という後継者がいました。元雅は、父世阿弥をして「祖父(観阿弥)にも越えたる堪能」と言わしめた才能の持ち主でしたが、永享4年(1432)に、三十代前半という役者としての「盛りの極み」の時期に、父世阿弥に先立って伊勢で客死した悲運の役者です(客死の原因は不明です)。その元雅がどのような役者だったか具体的なことは不明ですが、役者としての才能が並のものでなかったことは、なによりも右の世阿弥の発言によく示されています。一方、能の作者としての元雅の力量は、現在も上演されている『隅田川』『弱法師』『盛久』『歌占』という元雅作の能によって知ることができます。その特色を一言で言うならば、父世阿弥とはまったく異なる能をめざした「天才」というのがふさわしいように思います。このレクチャーでは、早世した天才役者の生涯を概観し、その作になる能の特色―作風についてお話しする予定です。(天野文雄)

主催:京都芸術大学舞台芸術研究センター
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会

講師:天野文雄(京都芸術大学舞台芸術研究センター特別教授)

昭和二一年、東京生まれ。京都芸術大学舞台芸術研究センター特別教授。大阪大学名誉教授。著書に、『翁猿楽研究』(平成七年、和泉書院。観世寿夫記念法政大学能楽賞)、『能に憑かれた権力者―秀吉能楽愛好記』(平成九年、講談社選書メチエ)、『現代能楽講義―能と狂言の魅力と歴史についての十講』(平成一六年、大阪大学出版会)、『世阿弥がいた場所―大成期の能と能役者をめぐる環境』(平成一九年、ぺりかん社、日本演劇学会河竹賞)、『能苑逍遥(上)世阿弥を歩く』『能苑逍遥(中)能という演劇を歩く』『能苑逍遥(下)能の歴史を歩く』(平成二一年~二二年、大阪大学出版会)、『能楽名作選(上下)』(平成二九年、角川書店)、『能楽手帖』(令和元年、角川ソフィア文庫)、共著に、『岩波講座能・狂言Ⅰ〔能楽の歴史〕』(昭和六二年、表章氏と)、共編著に『能を読む』全4巻(平成二五年、角川学芸出版)などがある。