京都芸術大学 藝術学舎 春季 オンライン講座(受講生登録制)
京都芸術⼤学舞台芸術研究センター提供連続講座 少しだけ深く読み解く「詩劇としての能」01-『井筒』のすべて-
七〇〇年の歴史と変化を通して学ぶ、
「現代に⽣きる能」の魅⼒
現在、内外の芸術界から熱い視線が注がれている能楽(能と狂⾔)ですが、その⻑い歴史のゆえに、能楽についてのわたしたちの理解はいささか表⾯的で、画⼀的なものになっています。それは今にはじまったことではなく、四〇〇年は昔にさかのぼる現象ですが、この講座では、本学の春秋座で上演されてきた能のなかから1曲をとりあげ、その映像を⽤いて、能の作者、上演史、素材、テーマ、趣向、演出、変化、逸話などについてじっくりと学び、「能」という舞台芸術の特⾊と魅⼒を伝えたいと思っています。今回は『井筒』をとりあげます。これから能を知りたいと思っている⽅、能についてもう少し深く知りたいと思っている⽅の受講を歓迎します。なお、毎回、最後の30分を質問にあて、5回のうち1回は演者をお呼びします。
担当講師
天野文雄(京都芸術大学舞台芸術研究センター特別教授)
1946年、東京都に生まれる。早稲田大学第一法学部卒業後、国学院大学大学院文学研究科修了。文学博士。大阪大学名誉教授。専門は能楽研究。著書に、『翁猿楽研究』(平成7年、和泉書院)、『能に憑かれた権力者』(平成9年、講談社選書メチエ)、『現代能楽講義』(平成16年、大阪大学出版会)、『世阿弥がいた場所』(ぺりかん社、平成19年)、『能楽名作選(上下)』(角川書店、平成29年)、『能楽手帖』(角川ソフィア文庫、平成30年)、共著に、『岩波講座能・狂言Ⅰ〔能楽の歴史〕』(昭和62年)、共編著に『能を読む』(全4冊、角川学芸出版、平成25年)など。研究の延長として、大槻文藏、梅若実玄祥、福王茂十郎の諸氏や国立能楽堂企画制作課と協同して、平成初年以来、廃絶曲の復元上演、現行曲の見直しにも数多く参画している。観世寿夫記念法政大学能楽賞、日本演劇学会河竹賞受賞。
この回では、これまでの講義で得た理解のうえに立って、2回目に用意したテキストによって、『井筒』一曲を趣向や修辞や演出にも留意しながら読み、最終的に『井筒』が描こうとしていることを考えてみます。これには対訳で掲載されている現代語訳も役立つはずです。素読するだけなら20分もかからないテキストですが、そこに紀有常女という存在を超えた、懐旧、恋慕という普遍的な感情がいかに深く描かれているかを確かめたいと思います。それが確かめられたなら、この講義の目的はほぼ達せられたことになります。演者にはこの回か次回にきていただく予定です。
この回では、春秋座の『井筒』の映像(シテ、観世銕之丞氏)を通しで鑑賞します。通しといっても、そのまま流すと2時間ほどかかるので、アイの語りの部分などはカットせざるをえませんが、前回のテキスト読解ではわからなかった『井筒』の象徴性や情調についても感じとるところがあるだろうと思います。残った質問の時間は、この回だけでなく、5回の講義全体についての質問でもけっこうです。