猿翁アーカイブにみる三代目市川猿之助の世界 第十回フォーラム
〈三代目猿之助の魅力〉
三代目市川猿之助(二代目猿翁)さんから京都芸術大学に寄贈いただいた貴重な歌舞伎関係資料をもとに、三代目猿之助の軌跡をたどるフォーラムの十回目。〈三代目猿之助の魅力〉をテーマに、ゲストにお話しいただきます。
ゲスト:市川團子(歌舞伎役者)「三代目市川猿之助―古典のブラッシュアップ」
・ 石川耕士(脚本家、演出家)「唯一無二の優(ひと)―十年の節目に―」
企 画:田口章子(京都芸術大学教授)
《企画者のことば》
三代目猿之助の魅力
京都芸術大学教授 田口章子
役者である限りは、見る人の心を打つ、本当の魅力ある役者になりたい。役者の魅力とか華というのは、最終的には人生観、哲学、生きる姿勢や芸に対する姿勢など、その役者の生き方にかかわってくると思う。そういう諸要素が魅力として醸成され、にじみ出てくるのである。日ごろの人間としての生きざまというものが反映してくるのであろう。もちろん、その魅力を深めるには、技術や年輪も必要であるのは言うまでもない。真に人の心を打ち、魅力ある役者になるには、年輪、経験、技術に加え、その役者の姿勢、生き方、哲学などが重要なポイントになってくるが、さらに求道者としての心も持たねばならないのではないだろうか。
経験を積んで得た技術や年輪を重ねた芸の深みだけでは見る人の心を打つことはできない。三代目猿之助が「本当」の魅力ある役者をめざして求めたのが、芸の道を極めるための求道者の道だった。三代目猿之助のストイックな一面をうかがい知ることができるが、悲愴感は全くない。
三代目猿之助はつねに時代の変貌や価値観の変化を先取りし、先人の心を学ぶ創造の精神を意識しながら、新しい試みに挑戦し続けた。批判の的となり、「異端」、「邪道」などと言われながらも、ぶれることなく堂々と信念を貫いた。大衆に支持される歌舞伎を創造すれば、異端も正統となり得るし、邪道も正道に昇華すると信じていたからだ。
歌舞伎の魅力を伝えるために三代目猿之助が見せてくれた数々の作品や舞台は、多くの観客の心をとらえ、夢中にさせてくれた。澤瀉屋の家の芸「猿之助四十八撰」は、求道者の道を歩んだ証である。
今回のテーマは「三代目猿之助の魅力」。三代目猿之助寄贈の「猿翁アーカイブ」はそれを確認するための資料であり、歌舞伎の可能性を広く、深く考えるための貴重な資源である。
三代目市川猿之助(二代目市川猿翁)
1939年(昭和14)生まれ。つねに「時代とともに生きる歌舞伎」をめざし、伝統の継承と創造に全身全霊をかけて走り続けている。「猿翁十種」をはじめとする家の芸の継承はもとより、『義経千本桜』『加賀見山再岩藤』などの古典歌舞伎の再創造、『菊宴月白浪』『競伊勢物語』などの古劇の復活、さらには『ヤマトタケル』や『新・三国志』シリーズなどのスーパー歌舞伎の創造まで、パワフルな活動はみごとな芸術的完成を見せる。現代歌舞伎に多彩で豊穣な成果をもたらしてきた演劇活動の中から「三代猿之助四十八撰」を制定した。歌舞伎にかける熱い思いと革新的な発想は、三代目市川猿之助が育てた弟子たちにも確実に受け継がれている。平成24年新橋演舞場において、祖父が名乗った猿翁の名を二代目として襲名。
京都芸術大学では、平成5年に芸術学部教授、平成12年〜17年副学長に就任。集中講義では学生に歌舞伎の実技実演指導も行なった。同大の春秋座には徳山詳直前理事長とともに劇場の構想・設計から関わる。初代芸術監督として、杮落し公演の『日本振袖始』はじめ、数々の舞台を企画し出演した。
お申込み方法
下記をご参照いただき必要事項を全てご記入の上、往復はがきにてお申込みください。
[入場料] 無料(全席指定)
[受付期間] 2025年6月23日(月)~7月25日(金)
※申込多数の場合は抽選とさせていただきます。
※おひとり様一回限りのお申込みでお願いいたします。
※消印が受付期間外の場合、申込無効となる場合がございます。
[結果通知]
8月中旬までに、当選結果をご返信いたします。当選された方へは座席番号を明記いたします(お座席はお選びいただけません)。
当選された場合、返信はがきが入場証となり、入場時にご提示いただきますので、必ずご持参ください。返信はがきをお持ちでない場合、入場をお断りする事がございます。予めご了承くださいませ。
協力:松竹株式会社、公益社団法人日本俳優協会、株式会社キノシ・オフィス