ダンス公演『破壊の子ら』
演出家・筒井潤とダンサー4人の野望!
演出:筒井潤(dracom)
出演:倉田翠(akakilike)、野田まどか、福岡まな実、松尾恵美
企画:山田せつ子
舞台監督:大田和司(舞台芸術研究センター)
照明:藤原康弘
音響:甲田徹
衣裳:南野詩恵
制作:富田明日香、川原美保(舞台芸術研究センター)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)l 独立行政法人日本芸術文化振興会
京都芸術センター製作支援事業
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「〇〇の子」というのがある。代表的なものは「ええとこの子」。子に対するシニカルな表現であり、同時に親も標的にしている。一方「アホの子」は、親の存在を抜きにしても使える、差別する意図がある言い回しである。この2つに共通して言えるのは、許しのニュアンスが存在していることではないだろうか。「あれ、〇〇の子やからな」と言えば、軽蔑を目的とする発言であったとしても、その後に「しゃあない」を接続できるようになっている。「〇〇の子やから、しゃあないわ」と。見落としてはならないのは「〇〇の子」と称される対象者への許しだけでなく、発言者自身へのあらかじめの許し、軽蔑的態度に対する批判を躱すためにもこの言い回しは機能している。難は親、あるいは要因となるものにあって、その子に当たる人物に言ってるんじゃないですよ、というわけだ。
昨今のコンテンポラリー・ダンスに関する議論において、個人で活動しているダンサーは「〇〇の子」のような扱いを受けているような気がしてならない。「コンテの子」。
1519年、女奴隷として差し出され、改宗させられて征服者側についたマリンチェは、その美貌と語学力をコンキスタドールのエルナン・コルテスに気に入られて彼の妾となり、二人の間には子を授かった。だからメキシコでは、スペイン人とインディオの混血であるメスティーソは「マリンチェの子(=破壊の子)」と呼ばれ、蔑まれてきた。しかし長い時間をかけてメスティーソは自身のアイデンティについて思考を巡らせ、スペイン人としてもインディオとしてもルーツを持ち得ないゆえに自らの存在をポジティブに「マリンチェの子」と見做すようになり、マリンチェを未来の象徴と再解釈するに至った。
今作品は目新しさを目的とはしていない。ダンスの歴史に対して無神経な罪深い私の身体に、言葉の力を一切借りず、空間と重力の中の隙間にある、何故か好機と感じられる僅かな場所を探させながら創った動き。そしてそれに時間と呼吸、さらには遊戯も吹き込んで営みを見出したダンサーが、観る者に「しゃあない」と思わせるまでひたすら踊りを晒す。仕方が無さの先にある前向きな未来を獲得するために。
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京都のダンスやるね〜 東京で言われました。え!この地域的な物言いはなんでしょう〜 でも、実際面白いのです。今回、演出の筒井さんは劇場空間に挑戦のようです。なかなか気難しい四人のダンサーの方々はハカイノコラなのでしょうか。まだわかりません。うむ、直感だけでこの企画をした私は、どきどきしながら開幕を待ちます。
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関連企画
明倫ワークショップ ≪公開稽古&WS参加者との“うまくまとめない”意見交換会≫
2018年10月19日(金)16:00~17:45
本作の稽古を公開し “うまくまとまらない”感想や意見を交換します。ダンスは言葉にし難いと言われるが、それは言葉が持つ機能を制限させてしまっているから?言葉を解放させてその可能性を探求します。
講師:筒井潤
定員10名 無料・要事前申込み
会場・お申込み先:京都芸術センター
(京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2/TEL 075-213-1000)