猿翁アーカイブにみる三代目市川猿之助の世界 第八回フォーラム
三代目猿之助の〈離見の見〉
三代目市川猿之助(二代目猿翁)さんから京都芸術大学に寄贈いただいた貴重な歌舞伎関係資料をもとに、三代目猿之助の軌跡をたどるフォーラムの8回目。
ゲスト:石川耕士(脚本家、演出家)、 岡崎哲也(松竹株式会社取締役常務執行役員、日本演劇協会理事)
企画:田口章子(京都芸術大学教授)
映像担当:京都芸術大学広報課、倉田修次
協力:松竹株式会社、公益社団法人日本俳優協会、株式会社キノシ・オフィス
主催:京都芸術大学舞台芸術研究センター
三代目猿之助の〈離見の見〉
田口章子
私は普通の人が追わぬものを必死に追いかけてきたような気がする。それは何か、よく分からぬ。何か途方もない大きなものを追い求めて、私の心は絶えず天高く天翔けていた。天翔ける心、それが私だ。
スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のヤマトタケルのせりふである。劇中のヤマトタケルと猿之助自身がシンクロするこのせりふは、「天翔ける心」を『ヤマトタケル』のテーマとして明確化することに成功した。そして、「何か途方もない大きなもの」を追い求めて創造した猿之助のスーパー歌舞伎は演劇史に新たなる一ページを刻んだ。
しかし、やみくもに「何か途方もない大きなもの」を追い求めてきたわけではない。
一九七七年に猿之助は史上最年少で責任ある立場、一枚看板の座頭として海外歌舞伎公演に臨み、一九八一年、一九八三年と立て続けにアメリカ、ヨーロッパを駆け巡った。
ニューヨーク、ワシントン、シカゴ、モントリオール、オタワ、ベルリン、パリ、ミラノ、ボローニア、レッジョ・エミリア、ロンドン、ウイーンと各都市における観客席からの反応は、三十代の猿之助にとって大いなる刺激となったことはいうまでもない。
猿之助は海外の舞台に立つことで多くの収穫を得た。
1 テンポアップの必要性
2 ドラマ性のある作品の上演
3 上演時間の短縮
いずれも、こんにちの歌舞伎がかかえる課題であり、求められているものばかりである。五十年も以前にすでに猿之助の視野にあったことが知られる。
歌舞伎になじみのない大衆にいかにおもしろくみてもらうか。そういう意識を持つ感覚を海外で学んだ。外から内をみる、猿之助の〈離見の見〉の開眼である。
第八回となる今回は、「三代目猿之助の〈離見の見〉」をテーマに、観客を意識しながら時代に応じて歌舞伎を革新し続けた「猿之助歌舞伎」の舞台世界をひも解いてみたい。
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三代目市川猿之助(二代目市川猿翁)
1939年(昭和14)生まれ。つねに「時代とともに生きる歌舞伎」をめざし、伝統の継承と創造に全身全霊をかけて走り続けている。「猿翁十種」をはじめとする家の芸の継承はもとより、『義経千本桜』『加賀見山再岩藤』などの古典歌舞伎の再創造、『菊宴月白浪』『競伊勢物語』などの古劇の復活、さらには『ヤマトタケル』や『新・三国志』シリーズなどのスーパー歌舞伎の創造まで、パワフルな活動はみごとな芸術的完成を見せる。現代歌舞伎に多彩で豊穣な成果をもたらしてきた演劇活動の中から「三代猿之助四十八撰」を制定した。歌舞伎にかける熱い思いと革新的な発想は、三代目市川猿之助が育てた弟子たちにも確実に受け継がれている。平成24年新橋演舞場において、祖父が名乗った猿翁の名を二代目として襲名した。
京都芸術大学では、平成5年に芸術学部教授、平成12年〜17年副学長に就任。集中講義では学生に歌舞伎の実技実演指導も行なった。同大の春秋座には徳山詳直前理事長とともに劇場の構想・設計から関わる。初代芸術監督として、杮落し公演の『日本振袖始』はじめ、数々の舞台を企画し出演した。
お申込み方法
下記をご参照いただき必要事項を全てご記入の上、往復はがきにてお申し込みください。
入場無料(全席指定)
先着順・定員600名
2023年7月10日受付開始
※定員に達し次第締め切ります。
[結果通知]
受付完了後、随時ご返信いたします。座席番号をご確認ください。
返信ハガキが入場証となり、入場時にご提示いただきますので、必ずご持参ください。
返信ハガキをお持ちでない場合、入場をお断りする事がございます。予めご了承くださいませ。
〈往信表面〉
〒606-8271京都市左京区北白川瓜生山2-116
京都芸術大学舞台芸術研究センター「猿翁アーカイブ・フォーラム」係宛
〈往信裏面〉
①代表者ご氏名(劇場友の会の方は会員番号もご記入ください)
②ご住所(郵便番号含む)
③お電話番号(日中の連絡が可能なもの)
④ご同伴者有の場合:ご同伴者氏名(1名様まで)
*車椅子をご利用のお客様、足の不自由なお客様はその旨ご記入下さい。
〈返信表面〉
代表者のご住所、ご氏名をご記入ください。
〈返信裏面〉
白紙
公演アーカイブ
当日パンフレット(PDF)
※当日のレポートは以下からご覧いただけます。
京都芸術大学 「瓜生通信」
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1149
記録写真
撮影日:2023年9月23日(土)