2017年度 共同研究プロジェクト「ダンスの創造的行為を巡って」 ゆるやかに振動する思想と劇場~筒井潤と4人のダンサーによる験(ため)しごと
一昨年度からの継続的テーマ研究である本研究プロジェクトでは、今年度、劇団dracom主宰の演出家、筒井潤さんを共同研究者として、また関西の4名のダンサーを研究協力者として、2018年度の本公演に向けた研究会及び劇場上演実験を行います。
企画について
筒井さん演出のdracom公演『ソコナイ図』『今日の判定』を観劇し、底知れない(まさしくソコノナイ)印象持ちました。時間と空間がどこまでも伸びていくような、今とか明日とかいうものが見えなくなるような感覚であり、生きている場所を裏返されたような感覚でした。芝居を成り立たせているからだの置き方、時間の配分、関西弁のイントネーションでありながら、独自のリズムを持って歌われるような俳優達の台詞。これらが重なりあって場を創りだしていたのですが、作品の面白さと同時に、これは、ひとつの「方法論」の発見ではないかという意識が立ち上がってきました。そのことにとても興味を引かれました。
筒井さんはダンスの作品にも多く関わって来ています。
今回の上演実験で劇場という固い空間と、強靭ですが柔らかい筒井さんの思想が、ダンサーの身体とともにどのように作動するか、楽しみにしたいと思います。
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研究代表者:山田せつ子
制作について
ダンスにおける「身体」という言葉の移ろいをどう捉えれば良いのかと演劇を志す私はずっと悩まされてきた。ダンスを批評するに当たって多用され過ぎたが故に、言葉としての「身体」が宙吊りになっていると私は感じていた。しかし最近は少し状況が変わってきているように思える。「身体」は腰を据え始めているのではないだろうか。それは一方でダンスを語る際に「ダンス」という言葉自体が宙に吊られているように見えるからだ。私個人の中で起きている変化なのか、時代の変化なのかは定かではない。この要因は義務教育でヒップホップが必修となり、そして間もなく「道徳」が教科化されるという流れと関係があるのかもしれない。あるいは劇場という制度から離れたところの踊りに着目する昨今の傾向とも無関係ではないかもしれない。
この機会に身体ととことん付き合い、それが結果として「ダンス」を少しでも引き摺り下ろすことになれば幸いである。
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筒井潤
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2018年度の本公演に向けたワークインプログレスとして公開します。
演出:筒井潤
出演:倉田翠(akakilike)、野田まどか、福岡まな実、松尾恵美
舞台監督:大田和司*
照明:藤原康弘
音響:甲田徹
衣裳:南野詩恵
制作:竹宮華美*、野澤美希*、川原美保*
(*舞台芸術研究センター)
photo/design : Takuya MATSUMI
主催:2017年度 共同研究プロジェクト「ダンスの創造的行為を巡って」研究代表者 山田せつ子(本研究はJSPS科研費 JP17H00910の助成を受けたものです)
筒井潤(つつい・じゅん)
演出家、劇作家、俳優。大阪を拠点とする公演芸術集団dracom(ドラカン)リーダー。2007年京都芸術センター舞台芸術賞受賞。過去にdracomとしてTPAM2008、フェスティバル/トーキョー2010、Sound Live Tokyo 2014、Nippon Performance Night 2017等に参加。個人として桃園会、『新長田のダンス事情』(Dance Box)、『Silent Seeing Toyooka』(城崎国際アートセンター)等の演出、山下残振付作品、マレビトの会、KIKIKIKIKIKI、維新派、akakilike、悪魔のしるしの公演などに参加。様式やジャンルを問わない活動で注目されている。日本劇団協議会機関紙『join』86号特集記事「私が選ぶベストワン2015」において、毎日新聞大阪本社学芸部の畑律江氏のベスト1演出家に選出される。TPAM2016コプロダクション「アジアン・アーティスト・インタビュー」ではインタビュアーを務めた。
倉田翠(くらた・みどり)
演出家・振付家・ダンサー。akakilike主宰。京都を拠点に活動し、ダンサーのみならず、俳優や美術家らとの共同創作で作品を精力的に発表。最近の企画・演出作品に、『家族写真』、『捌く』など。
野田まどか(のだ・まどか)
ミュージカルの舞台経験を経て、1996~2002年、TMパフォーマンス・プロに所属、小川珠絵に師事。以降、ソロ作品を発表する傍ら、国内外の振付家の作品を踊り、共同企画も行う。2007~2010年、舞踏カンパニー〈千日前青空ダンス倶楽部〉に所属。以降の主な出演作品は、日野晃演出『Real Contact 2010・2011』、2011年schatzkammer『Dig』、2012年相模友士郎演出『先制のイメージ』、やなぎみわ演劇プロジェクト『パノラマ~鉄道編~』、2016年、笠井叡演出『燃え上がる耳』など。2015年より親子ダンスユニット〈チチカカコ〉に参加、WSナビゲーターも務める。また歌い手としても活動中。
福岡まな実(ふくおか・まなみ)
2000年より舞踏カンパニー〈千日前青空ダンス倶楽部〉所属し2009年までの全作品に出演。同時にソロ活動も行い国内外で作品を発表。2012年にソロ初長編作品として『3人のダンス』を発表、2015年NY公演。黒沢美香&ダンサーズ、アンサンブル・ゾネ、余越保子、笠井叡など多数の振付家・演出家の作品に出演している。
松尾恵美(まつお・えみ)
香川県高松市生まれ。3歳よりクラシックバレエを習う。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業。近年の主な出演作品に、『燃え上がる耳』笠井叡/『シスターコンプレックス シンドローム』倉田翠(akakilike)/『財産没収』山口茜(サファリ・P)などがある。規則正しい繊細さと、野生動物のような獰猛さ。相反する二つの身体性が持ち味。
山田せつ子(やまだ・せつこ)
ダンサー・コレオグラファー。即興舞踏から出発し、ソロダンスを中心に活動。ダンスカンパニー枇杷系主宰を経て、京都造形芸術大学で12年間ダンスの授業を持つ。現在、同大学舞台芸術研究センター主任研究員として、春秋座・studio21での数々の企画に携わる。