テーマ研究Ⅰ「近代日本語における〈声〉と〈語り〉」 第2回 近代日本における〈声〉と〈語り〉1:「言葉」の自立-音曲との関係-一葉の位置
この回では、詩人・小説家で表象文化論研究者でもある芥川賞作家松浦寿輝氏をメイン・ゲストにお招きして、本研究の〈問題形成〉を纏めていただき、明治の変革期を生きた天才的作家樋口一葉を取り上げ、その朗読を後藤加代さんにお願いしました。
ゲスト講師:
松浦寿輝(作家、詩人)
浅田彰 (京都造形芸術大学大学院学術研究センター所長/批評家)
朗読:
後藤加代(俳優)
モデレーター:
渡邊守章(演出家・京都造形芸術大学舞台芸術研究センター所長)
松浦寿輝
1954年東京生まれ。作家、詩人。
1988年に詩集『冬の本』で高見順賞、95年に評論『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞、96年『折口信夫論』で第9回三島由紀夫賞、2000年に小説『花腐し』で第123回芥川賞、『知の庭園』で第50回芸術選奨、05年『あやめ 鰈 ひかがみ』で第9回木山捷平文学賞、同年『半島』で第56回読売文学賞/小説賞、09年『吃水都市』で第17回萩原朔太郎賞受賞するなど縦横の活躍を続けている。
12年3月まで、東京大学大学院総合文化研究科教授を務めた。
最近の著作に『川の光』『川の光 外伝』(中央公論新社、2007、2012)。
後藤加代
演劇集団円における渡邊演出の実験的ラシーヌ悲劇で、その存在感と強度のある声と台詞によって、悲劇女優としての類稀な才能を認められる。ラシーヌ『バジャゼ』の后妃ロサーヌ、『アンドロマック』のアンドロマック。『女王ベレニス』のベレニス(芸術祭優秀賞)。『悲劇フェードル』では、有史以来初めて、パリにおいて日本人による日本語のラシーヌ悲劇として高く評価され、1999年には、パリでリニューアル・ヴァージョンに出演。パルコ能ジャンクション2『當麻』で観世榮夫と野村武司(現萬斎)と共演。泉鏡花『天守物語』の冨姫(後に「空中庭園」製作でパリ公演も)、シェークスピア『ハムレット』(野村武司主演)のガートルードなど。円を退団後は、『キャバレ』等のミュージカル、平幹二郎のシェークスピア連続上演に参加。2005年には、クローデル没後五十周年記念・渡邊演出「朗読オラトリオ『繻子の靴』」(全曲版)で、その健在振りをアピールした。
浅田彰
一九五七年生まれ。批評家/京都造形芸術大学大学院学術研究センター所長。哲学・思想史のみならず、美術、建築、音楽、舞踊、映画、文学ほか多種多様な分野において批評活動を展開している。著書に『構造と力』、『逃走論』のほか、『ヘルメスの音楽』(筑摩書房)、『映画の世紀末』(新潮社)、『20世紀文化の臨界』(青土社)など。「GS」、「批評空間」、「インターコミュニケーション」などの編集委員、文學界新人賞の選考委員を長く務めた。
渡邊守章
一九三三年生まれ。東京大学教授、放送大学副学長、パリ第三大学客員教授等を経て東京大学名誉教授、京都造形芸術大学舞台芸術研究センター所長・教授。専攻は仏文学・表象文化論。演出家。演劇企画「空中庭園」主宰。著書に『ポール・クローデル―劇的想像力の世界』『虚構の身体』等。訳書に、ラシーヌ『フェードル アンドロマック』、ジュネ『女中たち バルコン』、クローデル『繻子の靴』( 上・下、毎日出版文化賞、日本翻訳文化賞、小西財団日仏翻訳文学賞受賞)、バルト『ラシーヌ論』( 読売文学賞受賞)等。演出作品に、ラシーヌ『悲劇フェードル』(芸術祭優秀作品賞)、クローデル『真昼に分かつ』、ジュネ『女中たち』(読売演劇賞)、泉鏡花『天守物語』等。日本の伝統演劇にも詳しく、能ジャンクション『葵上』『當麻』を、またクローデルの詩による創作能『内濠十二景、あるいは《二重の影》』『薔薇の名―長谷寺の牡丹』を作・演出。