彩吹真央&京フィルレインボーコンサートin春秋座 彩吹真央×佐藤隆紀インタビュー【後編】
毎年、春秋座で恒例となった宝塚歌劇団OGと京都フィルハーモニー室内合奏団とのジョイントコンサート。今年は、宝塚退団後、女優として、歌手として大活躍されている彩吹真央さんが登場されます。ゲストにはミュージカル俳優として人気の佐藤隆紀(LE VELVETS)がご出演。どんなコンサートになるのか、お二人にお話しを伺いました。(インタビュー:2021年10月)
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マイナスイオンに包まれる声
― 佐藤さんは、京都でもコンサートをされていますね。
佐藤 そうなんです。メンバーの佐賀龍彦が京都の出身で、京都府文化観光大使をしている縁もあってか結構、コンサートをさせていただいています。10年ぐらい毎年、京都ブライトンホテルさんでもディナーショーさせていただいています。あ、上賀茂神社や東寺で歌ったこともありますね。
彩吹 東寺? いいなあ。
佐藤 上賀茂神社の時は僕たちの歌で梅若玄祥先生が舞われたりして。
彩吹 素敵!
佐藤 本当に神聖で素敵な空間でした。ですから京都はすごく近い感じがします。
― 佐藤さんがこの世界に入るきっかけは何だったのですか?
佐藤 僕は高校生の時、剣道少年でだったのですが中途半端に期待されていたので本当につらくて辛くて。それでも歌うことはずっと好きだったんです。そんな中、音楽の試験で歌ったら先生が「佐藤くんいい声だね、合唱部来ない?」って誘ってくださって。
「なんだ、この楽しい誘いは。今の苦しい状況から逃れられる」と思ったのですが、ちょうど20万円ぐらいの防具を買ってもらったばかりで剣道を辞められず。それでも半年、悩んで悩んで、それで「もう、音楽にいく!」って決めて合唱部に入って。そうしたら一カ月後ぐらいに今度は「音大に行ってみる気はないの?」って言われまして。「え、僕なんか音大に行けるんですか?」と聞いたら、「がんばったらいけると思うけれど」「いきまーす!!」って(笑)。昔は今ほど歌えもしなかったですし、本当にどこを見ていってくださったのかわからないですね。ありがたいです。
彩吹 光る原石を見つけた!って感じだったんでしょうね。
― それで国立音大を出てLE VELVETSに入るわけですね。現在はミュージカルにも沢山、出演されておられますし、『レ・ミゼラブル』(2019~)ではジャン・バルジャンに抜擢されましたね。決まった時のことは覚えておられますか?
佐藤 当時、まだ若くジャン・バルジャンは考えていなかったのですが、オーディションのお話をいただいたので「これは挑戦だ!」と思って受けました。でも高音が全く出ず1年目は落ちてしまって…。2年目に受けた時も高音が全く出なかったのですが、気持ちで、感情で、表現しようと思いっ切り歌ったので「これは落ちた!」と思ったら受かったんです。だからもう不安でしたね。しかもやはり高い音が全く出なくて、叫ぶような声で舞台をやっていたので喉を痛めてしまって。これじゃあダメだと今年(2021)のレミゼに向けて1年半、練習して練習して。
実は僕の中で高音の出し方に関してはひとつ持論のようなものがあったのですが、2020年に『CHESS THE MUSICAL』 に出た時、共演したルークという29歳の男の子が、ものすごく高音が出るので「どうやって歌っているの?」って質問したんです。そうしたら僕が高音を出すために必要だと思っている真逆のことを言うんですよ。でも、どうきいても僕が必要だと思っていることはやっている感じなんです。だから僕が大事だと思っていることは必要で、その上でもう一個必要なのではないかなと仮説を立て、昨年のコロナ禍での半年間、それを練習したんですよ。そうしたら高音がさらに出しやすくなったんです!
それでやっと今年、ジャン・バルジャンとして初めて舞台に立てたかなと思います。でも、地方の一部の公演が中止になってしまって。福岡が半分、最後に松本公演ができたのでありがたかったですね。
― 『Bring Him Home(彼を帰して)』 は素晴らしかったですね。ぜひ、春秋座でも聴きたいです。
佐藤 歌いましょう! ぜひ。
オーケストラで歌わせていただけるなんて嬉しいですね。
― 佐藤さんの声は慈愛に満ちた、浄化されるような素晴らしい声ですよね。
彩吹 そうなんです。マイナスイオンに包まれるようですよね。なんでしょう、体をぐるりと包まれる感じなんです。周波数とか詳しくは知らないのですが、普通は体にツーンとまっすぐ入ってくる音が、ふわ~と体の周りをまわって入ってくる感じなんです。
実は初めて言うのですが、『マリー・アントワネット』の時、シュガーのようにこうやって歌えたらステキだろうなと思って袖で真似をしたことがあります。こういう風に出すということは、ここですごーく息を吸って、それをどういう風に体の中で回してそこへたどりつくんだろうって研究しながら真似してみたりして。
佐藤 わー、すごく嬉しいです。僕、発声が大好きで、楽しくてしょうがないんです。
彩吹 大好きって素晴らしい。
佐藤 発声って階段的に変わるじゃないですか。だんだん変わるのではなくて、何か掴んだ瞬間にバチッと変わる。
彩吹 うん、わかる!
佐藤 だから高校生の時から声が変わっていくのが楽しくて、楽しくて。昔はいわゆるエセオペラ声だったんですよ。あ~って(低い声で歌ってみる)。
彩吹 うん(笑)、作った声ね。
佐藤 素人がオペラの人ってこういう歌い方するよねっていう。それを恩師に「それは籠ってしまって良い声じゃないんだよ。男の人ってよく響く、良い声が鳴るって聞いたけれど?」って言われて。「なんだ、それ? 響く声って」と思ったのが発声の目覚め。そこからこれは良くない声なんだって直す作業から始めて、響く声ってなんだってピアノを叩きながらやっていたら、ある日バチ!って響く感覚があって「これはなんだろう!!」ってなったのが高校2年生の時なんです。
彩吹 おーすごい!
佐藤 と言っても、当時はバリトンだったので、ずっと高音は出なくて。だから大学3年生の時に高い音を出すには何かコツがあるはずだと図書館に行って、世界で活躍している歌手のDVDを観て研究をしていたら、みなさんに高音を出した後に何かクセのような特徴があるのを発見して。「なんだ、これは!」と真似をした日から高音が出るようになったんです。。でも1つ分かるとそれに伴ってダメになる部分もあったりして。それを補って、またダメになって、補ってという作業をするのがゲームをしているみたいな感じで楽しくて。
彩吹 声マニアだね。すごい! 探求心があったから今のシュガーがいるんだね。
佐藤 だから袖で聞いていてマネするっていう感じ分かります。いいなって思って、なんでそれがいいんだろうって発声の話をすると止まらなくなってしまうので、この辺にしておきます(笑)。
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デュエットするならこんな風に
佐藤 そういえば2人でってないですね。大勢で歌ったりしたことはありますが。
彩吹 そういえば『The Sparkling Voice』コンサートの時、元宝塚の女性が男性ソングを、LE VELVETSが女性ソングを歌ったこと、ありませんか? ほら、「顔を洗ったの~♪」とかって。
佐藤 あああ、ありましたね! ふざけてLE VELVETSの佐賀がエリザベートをやって、他の3人がゾフィーをやって。
彩吹 そうそう、面白かった! でも2人でというのは無いですね。
佐藤 今までデュエットされた方とは、どのような曲を歌ったんですか。
彩吹 ミュージカルが多いですかね。
佐藤 それじゃあディズニー系とかもいいですよね。
彩吹 いいですね! いいですね、すごくいい!!
選ぶとしたらやっぱりみなさんが知っている曲がいいですよね。何がいいかなあ…。
みなさま何が登場するか、楽しみになさっていてくださいね。
― お二人は一人で歌われる時が多いと思いますが、デュエットの時で特に大切にされていることはありますか?
佐藤 僕はまず、どうやって2つの声を混ぜたらキレイになるかな、というバランスを考えます。「自分の声を聴いてくれ!!」 という感じで歌うとせっかくのデュエットなのに混ざりが悪くなってしまうので。出したり引いたりというバランスをすごく考えます。
彩吹 私は宝塚時代から自分でもこれは悪い癖だなと思うことがあって。例えば『エリザベート』の闇広(「闇が広がる」)もそうですが、上級生とハモる時に寄り添う癖がついてしまっているんですね。音質にも役の個性が必要なのに、倍音的な、「この辺で歌っていらっしゃるから、そこへ寄り添ってみよう」としてしまい、どちらが歌っているの? ってなりがちなので、そうならない寄り添い方を目指したいなと思っています。
佐藤 どちらかというと僕もそっちの方かも。デュエットとなると特に寄り添いがちなんです。でもいいじゃないですか、お互いに。
彩吹 寄り添いながらいいものを作っていくのもいいですね。その作っていくのが嬉しいというか、未知との遭遇というか、ワクワクしますね。
佐藤 楽しみですね。
― 最後に春秋座に来られる皆様に一言お願いします。
彩吹 コロナ禍でミュージカルなど演劇作品が上演できなかった時があり、ようやくこうして劇場にお客様が戻ってこられるようになって、お客様と会えることが本当に楽しみです。
大それたことはできないかもしれませんが、京フィルさんの素晴らしい音楽に私たちが乗せていただいて「生で聞く音楽っていいな」って思っていただけたら、それだけで嬉しいですね。生きていく上で音楽って必要だなって、そういう風に思っていただける温かいコンサートにできたらいいなと思います。
佐藤 生の持つ音楽の力ってすごいと思うので、京フィルさんとご一緒させていただき、彩吹さんとこうしてご一緒させていただき、皆様にまた違った形で、違った姿をお見せできると思います。
彩吹さんが今、おっしゃられたように「あ~来て良かった~、これを楽しみにしていたんだ」って思っていただけるような素敵なコンサートを作ってお待ちしておりますので、ぜひお越しください!