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大学開学30周年記念・劇場20周年記念公演 KUNIO10『更地』

演出家・杉原邦生は、本学在学中の2004年に立ち上げた、自身が主宰するプロデュース公演カンパニーKUNIOでの活動を軸に、コンパクトな小劇場空間からダイナミックな中・大劇場空間まで自在に行き来し、扱う題材もギリシャ悲劇、歌舞伎など国内外の骨太な古典演目から新作現代劇までヴァラエティに富み、まさに八面六臂の活躍をしています。2021年3月『藪原検校』では春秋座芸術監督である四代目市川猿之助を主演に迎え、井上ひさしの傑作戯曲を現代の物語として大胆に甦らせた杉原が、大学時代の恩師でもある劇作家・演出家、太田省吾の代表作のひとつ『更地』を上演します。

東日本大震災の翌年、KYOTO EXPERIMENT2012にて本作をはじめて演出。戯曲の設定と異なる若い俳優をキャスティングすることで、二人の男女が「未来」の希望へと向かう新たな物語として再創造し、大きな注目を集めました。今回は夫婦役に、安定した演技力で舞台での活躍が目覚ましい南沢奈央と、『オレステスとピュラデス』(杉原邦生演出)でのタイトル・ロールも記憶に新しい濱田龍臣を迎えます。

コロナ禍における社会状況の変化に伴い、常識が覆され、価値観が揺さぶられているいま、若手実力派キャストとともに演出家の原点ともいえる本作を再び世に問います。

撮影:吉野洋三

僕が『更地』と出会ったのは演劇を学び始めて間もない2001年、京都芸術劇場 studio21柿落とし公演でのことでした。作者である太田省吾さんが命名したそのスタジオで観た『更地(韓国版)』が、太田作品との出会いでした。あれから20年、劇場20周年記念公演として再びこの作品と向かい合えることに、大きな意味と責任を感じています。
『更地』はある夜、かつて自分たちの家があった場所へとやってきた初老の夫婦の物語です。二人は屋根のなくなったその場所に立ってふと、頭上に浮かぶ月に気がつきます。それまでは見えていなかった、もしくは見ようとしてこなかった、けれど、屋根の上にいつも当たり前にあった月。僕たちはいつの時も、このことを忘れてしまっているのかもしれません。〈屋根〉がなくならないと気がつけなかった〈月〉の光を。
いま僕たちは、ふたたび〈月〉の存在に気付かされ、〈屋根〉の意味を考え直さなければならない時代を生きています。でも、もっと大切なのは、〈月〉の存在そのものだけではなく、〈月〉を輝かせる光のみなもとが別のところに在るという事実です。そのみなもとに立ち返ることでしか、僕たちがつくるべき〈屋根〉の本当のかたちは見えてこないと思うからです。
だからこそいま、僕にとっての演劇の原点でもある『更地』をもう一度演りたい、そう思っています。

杉原邦生

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作:太田省吾
演出・美術:杉原邦生
出演:南沢奈央 濱田龍臣

主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センター
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
初演共同製作:KYOTO EXPERIMENT2012

 


公演アーカイブ

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舞台写真
撮影:井上嘉和

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