KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2022 メルツバウ、バラージ・パンディ、リシャール・ピナス with 志賀理江子
Bipolar
ひたすらに歩き続け、止まることを知らない人がいた
私たちを抑圧するものは何か
舞台を横断する巨大スクリーンには、コンクリートの道の上をひたすらに歩く人の姿が映され、音が鳴り始める。人間社会と自然の関わり、死への想像から生を思考すること、東日本大震災後は、国や巨大資本が推進した「復興計画」で抑圧され続ける人間精神の狂いの内実を追い求め、制作を続ける写真家・志賀理江子の新作映像群。2019年に発表、展示した「ヒューマン・スプリング」のコンセプトを引き継ぎ、新たな撮影を重ねられたものだ。
本ビジュアルコンサートは、映像を手がける志賀、秋田昌美によるノイズ・プロジェクト「メルツバウ」、秋田との音楽アルバム「Cuts」にも参加するドラマーのバラージ・パンディ、そして 1970年代よりフランスのエクスペリメンタル・ロックを開拓し、現在も作家、ギタリストとして活動するリシャール・ピナスによる、初のコラボレーションとなる。
3者によって即興的に生み出されていく音の連なりに、リアルタイム編集でつくられる志賀の新作映像が混じり合っていく。劇場の大きな空間に響く音楽、巨大なスクリーンに照射される映像は、私たちが普段から耳の穴に機器をつっこんだまま聴いてきた音楽、手のひらのなかのスマホで観てきた映像とは、異なる体験を呼び込んでくれるだろう。⾝体スケールを超えて、事象を“浴びる”こと。それがまた次の、あるいは別の歩みにつながることを願って。
KYOTO EXPERIMENT ウェブサイト
https://kyoto-ex.jp/shows/2022_merzbow_pandi_pinhas_shiga/
上演映像(国際交流基金”STAGE BEYOND BORDERS” )
メルツバウ Merzbow
東京
秋田昌美によるヴィーガン・ストレイト・エッジ・ノイズ・プロジェクト。1980年代初頭のノイズ・インダストリアル・シーンに参加し、海外のレーベルを中心にリリースを始める。 1990年代にはグラインドコアの影響を受け、デスメタルのレーベル Relapseからアルバムをリリース。2000年代には megoの「punk な computer music」に共鳴、ラップトップによるライブ手法を日本でいち早く採用した。近年はアナログ機材を中心に制作している。 2003年頃から「動物の権利」(アニマルライツ)の観点からヴィーガン(完全菜食主義)を実践。「捕鯨反対」「イルカ漁反対」「毛皮反対」「家畜動物の解放」等をテーマに作品を制作している。近年では マッツ・グスタフソン、サーストン・ムーア、BORIS、灰野敬二、Nyantra、ローレンス・イングリッシュ、Xiu Xiu、GEZAN、アレッサンドロ・コルティーニなど様々なアーティストとのコラボレーションも行っている。新作「Hope」はウクライナ支援の為にウクライナのレーベルからリリース予定。
バラージ・パンディ Balázs Pándi
ブダペスト・ハンガリー
ハンガリー拠点のドラマー。ダブ、ブレイクコア、フリーインプロヴィゼーション、ノイズ、グラインドコア、ジャズのあらゆる経験を持ち、ヴェネチアン・スネアズ、 オットー・フォン・シーラッハ、The Kilimanjaro Darkjazz Ensembleなど、世界中の様々なアーティストと活動しツアーを行ってきた。2009年以降、メルツバウのライブで頻繁にドラムを演奏しており、一緒に3枚のライブレコードをリリースしている。最近では、メルツバウと共にマッツ・グスタフソンとトリオで演奏している。彼らは 2013年に「Cuts」をRareNoiseRecordsからリリース。2013年からはハンガリーのニュースサイトIndexでジャーナリストとして活動している。
リシャール・ピナス Richard Pinhas
ナント・フランス
音楽家・ギタリスト・作家。フランスの哲学者ジル・ドゥルーズやジャン・フランソワ・リオタールのもとで哲学を学び、1970年代より、音楽家・ギタリスト・作家として活動。フランス屈指のプログレ・ロックバンド「Heldon」となるバンド「Schizo」を創設し、フランスを代表する実験音楽家であり、エレクトロニック・ロックの発展における中心的人物として知られる。ロバート・フリップやブライアン・イーノなどの影響を受けながらも、非常に独創的な音楽スタイルを生み出す。ソロやバンドで精力的に活動するだけでなく、哲学に関する著書を執筆するなど、音楽というジャンルにとどまらない活動を行っている。
志賀理江子(しが・りえこ)
宮城
写真家。1980年愛知県生まれ。2008年宮城県へ移住。2004年ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン卒業。自らの写真行為の始まりを、「近代の果てのような時代に整備された安全・清潔・便利な住環境の中で育った私と、シャッターボタンを押すだけで目の前の現実を写し、そのイメージを手にできてしまうカメラ機器の親和性は、その暴力性において極めて高かった」とし、人間社会と自然の関わり、死への想像から生を思考すること、東日本大震災後は、国や巨大資本が推進した「復興計画」で抑圧され続ける人間の心⾝の狂いの内実を追い求めるような制作を続ける。近年は宮城県の制作の場「Studio Parlor」をオープンスタジオとして定期的に開き、ワークショップ、トークなどをアートコレクティブ「PUMPQUAKES(パンプクエイクス)」のメンバー協働で開催している。主な展覧会に「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館、2019)、「Off the Wall」(サンフランシスコ近代美術館、2021)、「つまづきの庭」(旧観慶丸商店・石巻、2022)がある。 2021年、Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)2021-2023を受賞。
主催:KYOTO EXPERIMENT、京都芸術大学 舞台芸術研究センター
共催:独立行政法人国際交流基金
共同制作:KYOTO EXPERIMENT、京都芸術大学 舞台芸術研究センター、独立行政法人国際交流基金