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KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム 池田亮司『datamatics [ver.2.0]』

コンピューターとテクノロジーを最大限に駆使し、人間の知覚を超えたサウンドとビジュアルをつくりだす池田亮司が、春秋座の巨大空間で1 日かぎりのオーディオビジュアル・コンサートを開催!

池田亮司はパリ在住、世界中で作品発表の機会が待たれるエレクトロニック・コンポーザー、ビジュアル・アーティスト。日本でも東京都現代美術館での大規模な個展「+/-[the infinite between 0 and 1]」や、成層圏にまで達する強力なサーチライトと音の波による、名古屋城での巨大インスタレーション《spectra[nagoya]》を「あいちトリエンナーレ2010」で発表するなど、その作品は常にサウンド、ビジュアルの両面から圧倒的なインパクトを与えてきた。微視的なDNAや分子から巨視的な宇宙まで、われわれを取り巻くさまざまな事象から抽出したデータを素材とし、知覚の極限から世界を理解、制御しようとする《datamatics[ver.2.0]》は、2006年から発展させてきたシリーズの最終形。高速で無限のシークエンスを生みだし、暴力的なまでの空間を緻密に構築するライブパフォーマンスとなる。2013 年には完全なる新作パフォーマンス『superposition』を京都にて日本初演する予定。その前段階ともいえる、池田によるウルトラミニマムな世界。無限に近いデータから生み出される、崇高なまでのオーディオビジュアル体験となるだろう。

コンセプト・コンポジション:池田亮司
コンピュータグラフィクス・プログラミング:松川昌平、平川紀道、徳山知永
共同委嘱:AV Festival 06, ZeroOne San Jose & ISEA 2006
共同制作:Forma、ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター、
山口情報芸術センター (YCAM) 2008
協力:Recombinant Media Labs
主催:KYOTO EXPERIMENT

 

datamatics project

「datamatics」は、現代社会に広がる不可視なデータを知覚することをテーマにしたアート・プロジェクト。その多面性を捉え、実体化する試みは、様々な形式(音と映像を用いたコンサート/インスタレーション/出版物/CD)で作品化される。

datamatics [ver.2.0]

高い評価を得ている池田亮司によるコンサートの長編新作。2006 年3 月に初演された前作に、新たに第二部を加え、大きくバージョンアップしている。「datamatics」シリーズ原則にのっとりながらも、そのオリジナル要素であるサウンド/視覚表現/ソースコードを脱構築している同作は、メタ「datamatics」と言うことができる。リアルタイムのプログラム計算とデータ・スキャニングを用いることで、前作よりもさらに抽象性の高いシークエンスを作り出している。また、超高速のフレームや異なるビット深度といったテクノロジカルなアプローチで、前作に引き続き、われわれの知覚の入り口を探求している。

レビュー

[ニューヨークタイムズ紙 2010 年9 月13 日掲載]
「爆撃音で終わる、現代生活のノイズ」 スティーブ・スミス
「池田亮司の作品では、「何が」「どうして」という点に気をとられ、より重要な「なぜ」という問いを忘れがちになる。1990 年代半ばから、作曲家およびマルチメディア・アーティストとして活躍し、現在はパリを拠点に活動する日本人アーティスト池田は、極端に高い周波数や低周波、音の持つ瞬間的な強度性、方向性、時間性、ほとんど感知できない音、攻撃的なデジタルノイズなどを用いて、人間の聴覚認識とサウンドの可能性を様々な角度から探求している。
(中略)
サイズの異なる白いブロックが、池田のサウンドとシンクロする様に、黒いスクリーンの中で上がったり下がったりする映像に始まり、高速で動く白黒の周波数帯が、ほのかな色のメタボールを浮き出させる。途中から小さな赤と青の形が突然現れ、その視覚的効果は衝撃的だ。その後、映像とサウンドのセグメントはより複雑になっていく。英数字が、株価表示機をさらにオーバードライブした様なスピードで、次々と現れては消えていく。黒をバックにゆっくりと回転する3次元グリッドには、ソナー音を伴って星や星座が現れる。それはくもの巣、はたまた、化学のモジュールの様。もし反作用のダンスなるものがあるなら、きっとこんな動きをするのだろう。まるで脈打つ様に、一定の間隔で刻まれ、偏在するサウンド。その鑑賞体験は、まるでSF という名のドラッグを飲んで、私達の日常に潜む数式の中をトリップしているかの様。この話が形而上学的だと気がついた人は、その通り。近代社会の中にあふれていつつも、その存在が注目されることのないデータやノイズを巧みに操作することで、池田とコラボレーター達は、みごとに繊細で感動的にエレガントな世界観を立ち上げる。終盤では、けたたましく脈動するセンセーショナルな爆音が、それまでの試みのすべてを打ち砕き、めまぐるしさが快楽的なものへと昇華する。」

プロフィール

池田亮司 いけだ りょうじ

1966 年岐阜生まれ。パリ在住。
日本を代表する電子音楽作曲家/アーティストとして、音そのものの持つ本質的な特性とその視覚化を、数学的精度と徹底した美学で追及している。視覚メディアとサウンドメディアの領域を横断して活動する数少ないアーティストとして、その活動は世界中から注目されている。音/イメージ/物質/物理的現象/数学的概念を素材に、見る者/聞く者の存在を包みこむ様なライブとインスタレーションを展開する。音楽活動に加え、「datamatics」シリーズ(2006-)では、映像、立体、サウンド作品を通じて、現代社会に広がる不可視なデータを知覚する事の可能性を探求している。「test pattern」プロジェクト(2008-)では、テキスト/音/写真/映像といったあらゆるタイプのデータを、バーコードおよびバイナリーパターンに変換するシステムを開発。テクノロジーと人間の知覚の臨界点に挑んでいる。「spectra」シリーズ(2001-)は、強烈な白色光と形質可能な場所性を素材とした大規模インスタレーション。過去、アムステルダム、パリ、バルセロナ、名古屋の公共空間で展示されている。カーステン・ニコライとのコラボレーション・プロジェクトである「cyclo.」(2000-)では、コンサート、CD、書籍を通じて、音の視覚化をリアルタイムで行うオーディオ・ヴィジュアル・モジュールと共に、ソフトウェアとコンピューターでプログラムされた音楽の中で、エラー構造と繰り返されるループを考察している。