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『中川晃教&京フィル ブリリアントコンサートin春秋座』 中川晃教さんインタビュー


日本のミュージカル界を牽引するシンガーソングライター・中川晃教さんと京都フィルハーモニー室内合奏団による豪華なコンサートが2024年2月17日(土)、春秋座にて開催されます。どのようなコンサートになるのか、中川さんにお話を伺いました。

 

春秋座の中にある、あの響きに
僕自身、確実に何か感じるものがあります
 

―― 春秋座には2015年に藤間勘十郎文芸シリーズ 綺譚『桜の森の満開の下』で俳優としてご出演いただきましたが、今回はコンサートでお越しいただけること、とても楽しみにしております。

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中川
 あれから時が立ち、今回、こうして声をかけていただき、とても嬉しいです。
春秋座は京都の街中から少し山を登った自然に囲まれた、とても空気の良い場所にあり、同じ京都でも様々な顔があるということを教えてくれる劇場です。僕にとっても思い出のある特別な劇場に全国のお客様が足を運んでくださり、歌声をお届けできる。それが、とても楽しみです。ミュージカルを愛するお客様、京都芸術大学の学生さん、初めてお越しくださる方と様々な方に、あっと驚く素敵な時間をお届けしたいと思います。

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―― 今まで、このシリーズは宝塚歌劇団のOGと京都フィルハーモニー室内合奏団(以下、京フィル)という組み合わせで行われてきまして、男性のミュージカル俳優と京フィルとの組み合わせとしては、今回が初となります。

中川 そういう意味でもとても楽しみです。京フィルさんと良い化学反応が起きたらいいなと思っています。春秋座の中でカッコよく、素敵に聴こえるような内容にしたいですね。

―― 今回のタイトル「ブリリアント」は中川さんのお名前の一文字「晃」の、ひかる、ひかりかがやくという意味、そしてミュージカルのトップスターとしての輝き、歌声がブリリアントだということで、ご提案したのですが、印象はいかがでしたでしょうか。

中川 すごく素敵だなと思いました! 僕の勝手なイメージですが、格式が感じられるタイトルだと思います。普段では味わうことができないステータスみたいなものが感じられますよね。
前回、俳優として出演した時に思ったのですが、春秋座の中にある、あの響きに僕自身、確実に何か感じるものがあります。京フィルさんもきっと感じるものがあると思います。ですからそこから生まれる一曲、一曲は春秋座でなければ聴けないと思うので、そういう素敵な時間が「ブリリアント」というタイトルに込められてると思います。

―― 今おっしゃられたように春秋座は歌舞伎劇場なので、他の劇場やホールで中川さんの歌声を聴くのとは違った趣があるのではないかなと思っています。

中川 僕は全国いろんな場所でコンサートをさせていただくのですが、その時、僕が「あっ」と気付かされるのが、ホールの響きなんです。春秋座は檜舞台ですし、壁などにも木が多用されているので音に木の温もりが含まれるのか、響きもまろやかな気がします。そして一つ一つの音が雑味無く伝わると言うのか、良い意味での緊張感みたいなものがあるんですね。
今回、オーケストラと歌声だけでミュージカルの1シーンを表現するわけですが、そんな贅沢な空間の使い方ができるのが僕の中で春秋座なんです。ですから、お客様には春秋座ならではの音のシャワーを全身に浴びていただきたいですね。

 

僕にとって大きな転機となった作品の曲を
歌わせていただこうと考えています

―― 今回のコンサートは、京フィルだけの演奏、京フィルの演奏をバックに中川さんが歌う場面と2つの構成になっています。中川さんのセットリストには「僕こそミュージック(『モーツァルト!』)」「君の瞳に恋してる(『ジャージー・ボーイズ』)」「偉大な生命創造の歴史が始まる(『フランケンシュタイン』)』「チェーザレ(『チェーザレ 破壊の創造者』)」が入っていますね。

中川 はい。前回、春秋座の舞台に立たせていただいてから約9年の間にやらせていただいたミュージカルの中で、やはり『ジャージー・ボーイズ』は僕にとって大きい経験でした。この作品は読売演劇賞の大賞を取ったんです。今までミュージカルはノミネートされても賞を取ったことはなかったのですが、この作品で初めて大賞を取り、私も読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞しました。もっと遡るとデビューの翌年に初出演したミュージカル『モーツァルト!』 でも、僕は読売演劇大賞優秀男優賞をいただきました。今回は、そのような僕にとって大きな転機となった作品の曲を歌わせていただこうと考えています。
そういった意味で、2020年に主演した韓国のミュージカル『フランケンシュタイン』からは「偉大な生命創造の歴史が始まる」を選びました。今、韓国ミュージカルは日本でも多くの方に認知されていますが、ミュージカルをやらせていただいてる僕からすると、とにかく歌が難しい! でも、とても良い曲が多いんですね。そして韓国の若いクリエイターたちが作った音楽は古いブロードウェイ、ウエストエンドの作品をやらせていただく経験とは、また違う気付きがあります。
また昨年、上演した『チェーザレ 破壊の創造者』では16歳の主人公を演じるという大きなチャレンジをさせていただきました。この作品は日本のオリジナルミュージカルということもあり、テーマ曲を歌いたいと思います。
約4年前、ちょうど日本でミュージカルが盛り上がってきたところにコロナ禍が始まってしまいました。本来ならこの4年間はミュージカルを愛する方々だけでなく、ミュージカルを観たことがない方々にも沢山の作品をお届けできたかもしれません。ですので今回、色々な作品のハイライト的な曲をお届けすることで、これらの舞台をご覧になれなかったミュージカルファンの方々は観た気分に、ミュージカル自体をまだご覧になったことがない方は、曲を通して興味を持っていただけたらと思います。きっと春秋座のコンサートでなければ僕自身もこのようなセットリストで歌うことはないので、そういった意味でも楽しみにしていただきたいです。

 

ミュージカル『モーツァルト!』に出会えたのが
ターニングポイントだったと思います

―― 京都芸術大学で舞台芸術を学ぶ学生の中にはミュージカルを志す学生もいることから、今回は当大学の学生との交流の場を設けたいと計画しております。

中川 すごくワクワクしています。学生の皆さんが今、どんなことを学び、どんなことを思って、何を目指しているのか。人生の大切な瞬間に交流ができるのが嬉しいです。 ミュージカルは今、多くの方から注目されるジャンルになってきていますが、それゆえに「ミュージカルってなんなんだろう」ということも含めて、僕自身が日頃感じていることをコンサートを通じて学生さんにも届けたいです。僕もいつまでも学びだと思っているので、皆さんから刺激をいただいたり、気付きがあるだろうと思います。

―― 中川さんは、すでに10代からシンガーソングライターとして、またミュージカル俳優として活躍されていましたが、多くの学生と同じ20歳前後の頃はどのような日々だったのですか?

中川 高校生の時に両親に「シンガーソングライターになりたいから東京に出たい」と話をしたら、学業を優先してほしいということと、当時、僕は誰にも認知されてなかったので、「もし、あなたが輝く原石だったとするならば、どこにいても輝くでしょ」と言われてしまい、東京ではなく地元・仙台市の大学に進学することを選びました。
その頃の僕は、音楽やミュージカルを学ぶという選択肢がなくて、ただ「シンガーソングライターになりたいから東京に出たい」と言ったわけですから、普通に考えたら「何、夢を語ってるんだ」と思われても当然だと思うんです。でも、偶然にもそのタイミングで東京に出てデビューするお話をいただきました。
僕の夢の一つとして、デビューしたら曲がテレビドラマの主題歌に起用されたり、歌番組やラジオに出たり、音楽雑誌のインタビューを受けるというのがあったのですが、本当に幸運なことに、それらの夢を18歳の時に叶えることができました(デビュー曲「I WILL GET YOUR KISS」がドラマ『マリア』主題歌に起用)。
ただ、夢が叶った後、スタジオと自宅を行き来をしながら曲作りをして、レコーディングをしてという毎日がどこまで続くんだろうと、ふっと思う時もあって…。つまり、歌うということは何なのか、歌うことが何に繋がっていくのか。例えば曲を作ることはアルバムをリリースするため、あるいは何かの主題歌に起用してもらうためで、それ以外で曲を書く、歌うことは僕にとって何なのか。夢を叶えることができた時、その先の目標や夢は何なのかと思うようになったんですね。
今、振り返るとそんな時にミュージカルと出会ったんだと思うんです。『モーツァルト!』に出会えたのがターニングポイントだったと思います。この作品に出演していなかったら、ここまでミュージカルをやっていたか分からないですね。

―― 出演されたのはデビューの翌年のことで大抜擢でしたよね。デビュー以前にミュージカルをご覧になったことはあったのですか。

中川 小学校6年生の時に東京の帝国劇場で『ミス・サイゴン』というミュージカルを観て、子供ながらに「うわぁ、ミュージカルってすごい!」と感じたんです。『ミス・サイゴン』は、ほぼ台詞がなくて歌だけで展開していくのですが、話が進むにつれ、僕は主人公の少女・キムにどんどん感情移入していったんです。まさか自分が少女に感情移入するなんて想像もしていなかったんですが、音楽や歌、お芝居を通してキムと一緒に物語を生き、ラストシーンではキムと同じ感情になっている。音楽、歌の力で主人公の人生を表現し、それをお客さんが体感する。そういう感動を子供の時に経験しました。
その時、シンガーソングライターになるという夢にもう一つミュージカルが加わったんです。そして、もしミュージカルに出られるのなら自分で曲を書いて、歌ってみたいと。ミュージカルに、ストーリー性のあるコンセプトアルバムと共通するものを感じたんでしょうね。 それから数年後、『モーツァルト!』のお話をいただいた時に、「そういえば子供の頃にミュージカルを観て感動して曲を作りたいと思ったな」と思い出して。 それで挑戦することにしたんです。

―― とはいえ大きな仕事だと思いますし、デビューの翌年なので怖さもあったのではないかなと思うのですが、いかがでしたか。

中川 もちろん身構えたり、自信が持てなかったりというのはあったと思うんですけれども、夢が叶うという気持ちばかりで怖さみたいなものはなかったです。でも、ラッキーだったのは僕が演じたモーツァルトは音楽家なんですよね。例えばこれが、お医者さんや哲学者、数学者役だったら違ったと思うんです。なぜなら自分にない部分ですから。でも音楽に憧れ、志している人間としてモーツァルトの中に自分に近いものを見つけたんでしょうね。自信も経験もなかったですが、モーツァルトということで大きくジャンプして飛び越えることができた、役にぶつかることができたのだと思います。

 

なぜ、オンを切り替えるのかというと
目的に向かって集中したいから

―― 以来、途切れずに舞台や音楽の仕事をされていますが、お忙しい日々の中でステージとプライベートを切り替えるスイッチはありますか。

中川 基本的に切り替えるのはとても大事なことだと思っています。なぜ切り替えるのかというと目的に向かって集中して、限られた時間の中で良いパフォーマンスをしたいからなんですね。求められ、声をかけていただいたことに対して100%で向き合いたいというのが僕のポリシーとしてあるので。そういう意味では目的に向かって準備して達成する。ということをやり続け、オフはそれをやらない時間なんです。
とはいえ、例えば沢山の方々と作品を作る場合、顔合わせで「よ~いドン!」とスタートしても皆さんのレベルに僕自身が達してないこともあるわけです。だからスタート切った時、僕は皆さんの先にいるぐらいの準備をしておかないと不安なんですよ。とことん練習しないと嫌なタイプなので、そういう意味ではオフこそ誰にも邪魔されずにゆっくりと仕事に向かって準備ができる時間ですね。

―― そういう風に稽古場に入る前から準備万端にするのはデビュー当時からですか。

中川 いえいえ、19歳で初めてミュージカルに出た時は「 え、なんで練習していかないといけないの? これから練習するんでしょ?」と、稽古初日にその場で初めて譜面を開き、初めて台本を読むレベルでした(笑)。だから稽古前に2、3回練習して行くようになっただけでも僕の中では大きな変化なんです。
なぜ練習しておいた方が良いと自分の中で分かったかというと、単純に時間が問題なんですよね。 例えばピアニスト、歌唱指導の方、演出助手、僕というメンバーでの稽古を3時間抑えていただいたとしても、皆さんも僕も集中力には限りがあるわけです。だから、なるべく限られた時間――例えば3時間で10曲、練習するとしたら、大体2時間以内で終わるぐらいの準備をしていった方が、効率がいいのかなと思ったりして。そうやって少しずつ自分ができることを先に先にやるようになっていったわけです。
でもそのモチベーションは、常に演出家や共演者の方とワクワク、ドキドキしながら作品作りができる状態にしておく、ということかもしれません。僕の中で歌や台詞を覚えていくのは絶対ですが、それ以上に稽古場の空間や時間が気持ち良いとか、なんだか笑えるとか、楽しいとか、そういうことがすごく大事なんじゃないかなと思っています。初めてのミュージカルの時、セリフも何も見ずに稽古場に行っていた僕が、今はそういう気持ちでいます。

 

「求められることに答えられる喜び」をどれだけ持てるか

―― 中川さんは稽古場や様々な仕事先、ツアーなど旅先での人との出会いを常日頃から大切にされておられるように感じます。

中川 18歳でデビューして今、41歳 なので20年以上、この世界の中でやらせていただいていますが、だんだんと、仕事をいただくということは僕にとってどういうことなのかと噛みしめるようになりました。それはミュージカルの中で培った経験、 歌声一つを武器にやってきた経験などが種となり、そこでの出会いが栄養源となって良い土壌ができ、だんだん芽が出てきたんだと実感しているからだと思います。
というのも自分が10代、20代の時に決してこの世界は甘いものではないということを身をもって実感したんですね。最初は自分の好きなことだけをできれば良かったんです。でも、自分が好きなことを続けていくとなった時、「求められることに答えられる喜びをどれだけ持てるか」が大事だと気が付いたんです。
デビューした時のイメージは一生、背負って大切にし続けなければいけないという思いもありますが、そこから次のステージに行く時、そのイメージだけに囚われていてはダメだと感じます。「中川にこれをやらせたい、やらせたら面白いんじゃないか」と思っていただけたのなら、主演であろうがなかろうが関係ない。役に自分が合ってたら絶対やるべきと常に自分を開拓し、新しい自分を見つけていくようにしました。だから25歳ぐらいまでに「言われたものは、全部やろう」という思いに切り替えることができたんです。
今は求められるものは全部、自分にとってのチャンスであり、相手からの評価だと思っています。できないと思われていたら私に振ってくださらないだろうと、ある時期から思うようになったので「やりたくない」という言葉は自分の中に無くなったのと、仕事を選ぶことはしないですね。僕にこの役ができると思っていただいたのなら絶対にやってみたい、やり通したい。こういう風に思うところから出会いを大切にするっていう感覚が自然と持ってるようになったのかなと思います。

―― ありがとうございました。最後に春秋座にお越しになるお客様へメッセージをお願いします。

中川 京都の街並み、劇場がある北白川の自然環境、京都芸術大学の学生さんとの交流。それらを通してのコンサートは僕にとって、とても濃密な時間になると思います。そういった時間の中で作る舞台は、その時しか味わえないと思うので、ぜひ沢山の方に聴きに来ていただきたいです! 
劇場でお待ちしております!

 

公演情報はこちら https://k-pac.org/events/9858/